2024/1/8
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おかずはご飯より少なく... 『養生訓』が示した “日本人の胃腸に合う食事” |
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おかずはご飯より少なく...『養生訓』が示した“日本人の胃腸に合う食事”
『養生訓』は、 江戸時代前期から中期に差しかかる 1713(正徳3)年に出版されて以来、 日本で最も広く、 最も長く読み継がれてきた健康書の古典です。
著者の貝原益軒は死去する前年においても 体力気力ともに充実し、 自ら筆を執って『養生訓』8巻を書き上げ、 83歳で見事に天寿をまっとうしました。
その姿は、 生涯をかけて追求した養生の道が 正しかったことを雄弁に物語っています。
『養生訓』の中で語られている、 養生の軸である「食養生」について、 予防医学の第一人者で内科医の 奥田昌子氏が編訳してお伝えします。
養生は健康な胃腸から始まる人は食べたものを胃腸で消化し、 栄養を全身に送って命を繋いでいる。
植物が土から養分を吸って成長するようなものだ。
だから養生を志す人は、 まず胃腸の調子を整えることが欠かせない。
食事は諸刃の剣食事は生活の中で最も大切なものであり、 飲まず食わずでは半日ももたない。
けれども同時に、食への欲求は非常に強い。
気のおもむくままに食べたり飲んだりしたら 必ず胃腸を壊し、病気になって命を落とす。
好物であっても食べすぎるな食事をする目的は空腹や喉の渇きを 癒やすことであるから、 空腹ないし渇きが満たされたら終わりにすべきだ。
欲張って好きなだけ飲み食いしてはならない。
好物を出されたら、食べすぎないように用心せよ。
よく考え、 強い気持ちで欲求に勝たなければならない。
臆病なくらい慎重でなければ、 病気を防ぐことはできないのだ。
過ぎたるはなお及ばざるがごとし養生を目指すなら、 偏らないように食べよ。偏らないとは、 過不足がないという意味だ。
食事は空腹が癒える程度でよく、 食べたいだけ食べてはならない。
過ぎたるはなお及ばざるがごとしというように、 何ごとも過不足のないようにするのが肝心だ。
好物であっても「腹八分目」珍しい食材や好物を出されても、 少し残して八分か九分でやめるのがよい。
腹一杯食べると、あとで苦労することになる。
たとえ体によいといわれる食材でも、 満腹になるまで食べれば病気を招く。
飲食で最も重要なのは、満腹を避けることである。
食事の基本はご飯である日本人は海外の人と比べて食べたものが もたれやすい[*]。肉は消化に時間がかかるため、 ことに獣の肉を食べすぎてはならない。
食事はご飯を中心にすべきであり、 どんなおかずも、 ご飯よりたくさん食べるのは望ましくない。
* 日本人の胃は縦に長く、胃酸が少なく、 処理した食物を腸に押し出す力が弱い。
じっくりこなすのに適した胃であるが、 食べたものが長くとどまり、 もたれやすい傾向がある。
一日単位で腹八分目にすればよい
昼になっても朝食が腹に残っていたら昼食を抜き、 おやつも食べないのが正解だ。
消化不良のときは3食にこだわることなく、 次の食事を抜くことだ。
半分残すとか、 酒や肉をやめるのでもよいだろう。
場合によっては2、3日抜いたって構わない。
軽い胃もたれなら、薬を飲まなくてもこれだけで治る。
一日単位、 一週間単位で腹八分目にすればよいのだ。
養生を知らない人は、 「食べなければ元気になれない」と考えるから、 かえって症状が悪化する。
養生のコツは「好きなものを少量食べる」
好きな食べものというのは、 体が欲しがっているということだ。
そのぶん、食べれば体の滋養になる。
しかし、 食べすぎれば体を壊すことに変わりはなく、 それなら嫌いなものを少量食べるほうがマシだろう。
一番よいのは、 好きなものを少量食べることである。
料理も酒も少し控えれば健康でいられる
ご飯は2、3口、おかずは1、2口残せば 健康を損なわずに済む。
酒もそうだ。少し我慢して、 深酔いしないようにすれば害がない。
肉を1切れ食べても10切れ食べても味は変わらない。
果物を1粒食べても10粒食べても同じだろう。
たくさん食べて胃を壊すより、 少し食べて風味を楽しみ、 健康でいるほうがよい。
薄味がよいのには理由がある食事を薄味にすると喉が渇かず、 水や茶を頻繁に飲まずに済む。
水分の摂りすぎは胃酸を薄めて 胃の働きを低下させるうえに、 過剰な塩分は胃の粘膜を傷つける。 薄味がよいのはこのためである。
塩分を過剰に摂取すると、 高血圧のほかに胃がんの発症率も高くなる。
日本人は海外の人と比べて胃腸が弱い中国大陸や朝鮮半島の人は 日本人より胃腸が強いので, 馬、羊、犬、豚、鳥などの肉を しっかり食べても健康でいられる。
日本人は穀物中心の食生活を送ってきたため、 肉をたくさん食べると病気になりやすい。
現代の研究から、 この違いの背景には、 胃腸の構造や機能に関する遺伝子の 差があると考えられている。
酒は毒にも薬にもなる酒は天からの授かりものといわれ、 少し飲めば体が温まり、高ぶる気持ちを鎮め、 食欲を促し、悲しみを忘れさせ、 楽しい気分にしてくれる。
しかし、 飲みすぎると酒ほど健康を害するものはない。
用い方次第で毒にも薬にもなるという点で、 酒は火や刃物に似ている。
たしなむ程度にすれば害がなく、 楽しく飲めるが、酒ばかり飲んで、 ご飯をあまり食べない者は寿命が短い。
空き腹に酒を飲むな
酒を飲むのは食後がよい。
空腹のとき、 特に朝の起き抜けに飲むのは体に悪い。
空き腹で飲むとアルコールが直接胃の 粘膜に触れて胃を荒らすうえに、 アルコールが急速に吸収され、 肝臓に負担がかかるからである。
朝の起き抜けは前夜の夕食から時間がたち、 胃が完全に空になっているため飲酒は避けたい。
長寿の人は下戸が多い
古い書物に、 「健康で長寿の人は酒を飲まない」とある。
私が地元で調べたところ、確かに、 非常に長生きした人は9割がた 酒を飲んでいなかった。
大酒飲みで長生きした人はまれである。
飲むなとは言わないが、 ほろ酔いにとどめるのが長寿の秘訣である。
酒を飲んだら刺激物に気をつけよ
酒を飲みながら刺激の強い香辛料を 摂取してはならない。
あとで苦しむことになる。
香辛料やカフェイン飲料などの刺激物は 胃酸を増やす。
アルコールには食道と胃の境目にある 筋肉を緩める働きがあるため、 刺激物を摂取すると増えた胃酸が逆流し、 逆流性食道炎が起きやすくなる。
<参考:貝原益軒>
1喧嘩はするな、
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