2023/9/1

命にかかわる「心筋梗塞」

 

命にかかわる「心筋梗塞」…

突然襲ってくる「発作」に

注意すべきは、こんな人たち

日本人の死亡原因として、

がん(悪性新生物)に次ぐ第2位の座を

長年占めているのが心臓疾患です。

 

突然死の原因としては、

心臓疾患がダントツの第1位です。

 

心臓疾患のなかでも多いのが

狭心症や心筋梗塞です。

 

怖い病気にもかかわらず、

狭心症や心筋梗塞の正しい知識は

十分に周知されているとはいえません。

 

誰でもしっておきたい基礎知識を

Q&Aで解説していきましょう。

この記事では「発作」について、

わかりやすくまとめてみました。

狭心症・心筋梗塞第2回

 

 

 
 
 

Q 狭心症と心筋梗塞は、

心臓のどこに異常が起こりますか?

 
 

心臓の「冠動脈」の異常によって起こります。

冠動脈の役割を知ると、

発作が起こるしくみも理解できます。

 

心臓は、

心筋という強い筋肉でできています。

1分間に60〜80回も収縮と拡張をくり返しながら、

全身に血液を送り出しています。

 

このように、

休みなく働き続ける心臓に酸素と栄養を供給するには,

大量の血液が必要です。

 

心臓は、

自分の心筋にも血液を送らないといけないわけです。

 

心筋に血液を供給しているのが冠動脈です。

心臓の表面を冠のように覆っていることから

名づけられました。

 

狭心症や心筋梗塞は、

冠動脈が狭くなったり、

詰まったりして血液の流れが

滞ることが原因で起こります。

 

この状態を「虚血」といい、

狭心症や心筋梗塞は「虚血性心疾患」と

呼ばれています。

心筋が虚血になると胸痛を引き起こすだけでなく、

突然死につながる危険な不整脈を誘発したり、

心筋の収縮を弱めてしまうことがあります。

 

冠動脈の重要性からみて、

それがどれほど危険な状態なのか理解できるでしょう。 

 

 

Q 発作はなぜ起こるのですか?

 

A 狭心症と心筋梗塞は、

冠動脈の血流が不足したり、

一時的あるいは完全に途絶えたりする

「虚血」状態になることで起こります。

 

一部が狭くなって血流が悪くなると

狭心症になります。

 

完全に詰まって血流が途絶えると

心筋梗塞になります。

 

血流が悪くなる原因は、

冠動脈の一部が狭くなることです。

これを「狭窄」といいます。

 

 

 
 
 

血液には、

全身の細胞に酸素などを送る役割があります。

 

狭窄によって血流が不足すると、

その先に必要な酸素が届かず、

心臓の「心筋」が酸素不足に陥って

発作が起こります。

 

狭窄による心筋への血流不足は、

心筋が多くの酸素を必要とするときに、

より顕著になります。とくに運動時は、

心拍数が増加すると必要な酸素も増えるので、

虚血になりやすいのです。

 

これが労作性狭心症(走ったり、

重いものを持ったりしたときに発作が出るタイプ)です。

 

発作時は心筋の収縮が弱まり、

心臓のポンプとしての機能にも

支障をきたしてしまいます。

 

発作時の痛みや息苦しさは、

心筋からのSOSサインなのです。

 

 

Q 発作に気づかないことはありますか?

 
 

A ほとんどの人は、

胸の痛みなどを感じて

心臓の異変に気づきます。

 

ところが、

狭心症の発作が起こっていても痛みを感じず、

見過ごしてしまう人がいます。

 

とくに高齢者や糖尿病の人によくみられます。

 

加齢や病気の影響で神経の働きが衰えると、

痛みが伝わりにくくなります。

また、もともと痛みに強い人や

痛みに鈍い人もいます。

 

40歳以上の男性または

50歳以上の女性で、

次の危険因子がある人は要注意です。

 

● 肥満がある
● 糖尿病がある
● 高血圧がある
● 脂質異常症がある
● 喫煙習慣がある

 

これらに2つ以上あてはまる人は、

運動負荷心電図検査

(運動をして心臓に負荷をかけた状態で

心電図をとる)を受けておくと、

早期発見につながります。

 

 

 
 
 

検査で動脈硬化がある、

あるいは冠動脈の狭窄があるなどと言われた人は、

放置してはいけません。

 

いつの間にか狭心症から心筋梗塞へ移行したり、

あるいは最初から心筋梗塞の発作に

みまわれたりすることもあります。

 

そうなると、

心臓突然死という最悪の結果を招きかねません。

 

なにも症状を感じていなくても、

冠動脈の血流が途絶え、

心臓が虚血状態(冠動脈の血流が不足したり、

一時的あるいは完全に途絶えたりする)

に陥っていることを「無症候性心筋虚血」といいます。

 

無症候性心筋虚血は、

糖尿病のある人や高齢者に多いので、

症状がなくても定期的に

心臓の検査を受けておくと安心です。

 

とくに、

糖尿病の人は動脈硬化が進みやすいことを自覚し、

主治医の指示に従って、定期的に検査を受けましょう。

 

心電図に異常を認めたときに、

さらに造影剤を使った

CT検査が診断に役立つことがあります。

 

 

Q 糖尿病があると発作に

気づきにくいのですか?

 

A 糖尿病の患者さんには、

発作時の強い痛みを感じられない人がいます。

糖尿病が引き起こす合併症の影響によるものです。

 

糖尿病を発症して5年以上経過した人に

増えてくるのが、

「神経障害」という合併症です。

糖尿病で高血糖が続くことで、

全身の神経が障害されて起こる病気です。

 

神経には、

感覚を伝えたり筋肉を動かす指令を

伝えたりする役割があります。

 

しかし神経障害が現れると

神経の働きが鈍くなり、

痛みなどを感じにくくなります。

 

そのため、

狭心症や発作が起こっても、

症状に気づかないことがあるのです。

 

発作時に多少の違和感がある人もいますが、

強い痛みではないので、

狭心症だと気づかず見過ごしやすくなります。

 

神経障害が進行すると、

狭心症が何度起きていても気づかず、

心筋梗塞を起こしてもはっきりした症状が

現れないこともあります。

 

そのため、

いきなり命にかかわる大きな

発作を起こすケースが少なくありません。

 

神経障害だけでなく、

動脈硬化もあります。

 

高血糖は全身の血管を傷つけます。

 

血管が傷つくと、

そこからLDLコレステロールが侵入して酸化し、

動脈硬化が進んでいきます。

 

心臓の冠動脈で動脈硬化が進行すると、

血管が狭くなって狭心症や心筋梗塞を招くのです。

 

糖尿病のある人はとくに

狭心症や心筋梗塞を起こしやすく、

海外では、

糖尿病のある人の40~50パーセントが

心筋梗塞で亡くなっているという調査もあります。

 

過去に心筋梗塞を起こしたかどうかも、

心電図検査などで見つけることができます。

 

糖尿病のある人は、

合併症の心配があるため、

定期的に通院して検査を受けているはずです。

 

そのおかげで偶然、

狭心症や心筋梗塞を発見できることがあります。