脳梗塞の前兆となる症状とは?
Medical DOC監修医が脳梗塞の前兆となる
症状・予防法や何科へ
受診すべきかなどを解説します。
気になる症状がある場合は迷わず
病院を受診してください。
「脳梗塞」とは?
脳梗塞とは、
脳の血管が何らかの原因で
突然詰まる症状です。
血管が詰まると血液が流れなくなり、
血管の先にある脳神経細胞が
死んでしまいます。
脳梗塞が起こってから数時間以内に
脳細胞は死滅します。
いちど死滅した脳細胞は再生しません。
放置すると命を落とす、
重度の後遺症を起こして寝たきりになる、
仕事や生活に大きな障害が出るなど
深刻な症状を引き起こします。
脳梗塞は、
病院での応急処置が早期であればあるほど
回復の可能性が上がります。
脳梗塞の症状が現れたら、
その場で救急車を要請しましょう。
脳梗塞であっても、
前兆があってから4.5時間以内なら
血栓を溶かす薬を使い、
回復を図ることができます。
脳梗塞を起こしても無事に生還できるかは、
まさに「時間勝負」。
前兆の症状を知り、
適切な処置をすれば、
後遺症を残さず復帰できる可能性があります。
「脳梗塞の前兆らしき症状が出たら、
一分一秒でも早く救急車を呼ぶ」
という意識を持ちましょう。
脳梗塞を疑う症状があらわれても、
数分~1時間ほどで回復することがあります。
「一過性脳虚血発作」という状態で、
一時的に脳の血管が詰まることで起こります。
一過性脳虚血発作が発症したら、
約2割の確率で脳梗塞が起こるリスクがあります。
短時間で再発することも多いため、
たとえ回復したと感じても、
ただちに脳神経外科、
脳神経内科を受診しましょう。
脳梗塞と脳卒中の違い
脳梗塞は、
脳卒中のひとつです。
「卒中」とは昔の言葉で
「突然中(あた)る(=突然起こる)」
という意味です。
元気だった人が突然倒れて意識を失い、
目覚めても半身不随など
後遺症が残る症状を、
昔の人は卒中と名付けました。
脳卒中は一般的な呼び名で、
医学用語では脳血管障害と呼びます。
脳卒中は、
脳の血管が詰まる、
破れるなど異常を起こして急激な
脳障害を起こす症状の総称です。
その名のとおり、
ほとんど何の前触れもなく発生し,
高い確率で半身不随や寝たきりなど、
深刻な後遺症が残ります。
脳卒中は平成23年の調査では
年間114万人以上の方が発症しており、
決して珍しい病気ではありません。
「脳卒中」は大きく3つの症状に分けられます。
脳血管が詰まる虚血性脳卒中「脳梗塞」、
脳血管が破れる「脳出血」「くも膜下出血」があり、
うち脳梗塞は全体の7割以上を占めます。
脳梗塞も脳出血も、
脳に深刻なダメージを与えます。
前兆症状も同じですが、
脳出血、
くも膜下出血は激しい頭痛を伴うことが多いです。
脳梗塞の前兆となる初期症状
脳梗塞は脳血管が詰まった場所により、
さまざまな前兆を引き起こします。
以下に解説する症状がある場合は
脳梗塞を疑い、
すぐに医療機関を受診しましょう。
体の右半分または左半分のしびれ、
感覚の消失
突然、
体の半身(右半分、または左半分)が動きにくい、
痺れる、
感覚が失われる、
などの症状が現れます。
脳梗塞を起こしている場所と
反対側の手足に異常が起こります。
箸がうまく持てない、
口から含んだ水が漏れる、
足がふらつく、手が動かしにくい、
など様々な症状が現れます。
始めは腕が少し痺れる程度だったのが、
やがて足が動きにくくなり症状の範囲が
広がることもあります。
両手を「前ならえ」のポーズで上げ、
てのひらを天井に向けることでわずかな
腕の麻痺が判別することができます。
脳梗塞がある場合、
左右どちらかの腕が下がります。
このような症状が現れたら、
すぐに救急車を呼びましょう。
ろれつが回らない
脳は各部位でさまざまな役目を担います。
言語野を司る部分が脳梗塞を起こすと、
言葉が出ない、
または出にくい(失語)、ろれつが回らない、
言われた言葉が理解できないなど、
さまざまな言語障害が出ることがあります。
かんたんな言葉を話してもらう、
語り掛けるなどして、
異常だと判断したらすぐに救急車を呼びましょう。
突然の失明、眼球の動きが異常
脳梗塞の前兆症状で、
視覚障害を引き起こすことがあります。
突然目が見えなくなる、見えにくくなる、
二重に見えるなどさまざまなパターンがあります。
片目だけ見えない、
両目とも見えない、というケースもあります。
左右どちらの目で見ても
「視野の半分(右側、または左側)しか見えない」
と感じることもあります。
これは半盲(はんもう)と呼ばれ、
たとえば車のヘッドライトが右側しか
見えないことから異常に気付くことがあります。
失明する原因で有名な「網膜剥離」は、
短時間に視野が欠け、
やがて何も見えなくなる症状です。
黄斑という目の中心部の網膜が
剥がれることで起こりますが、
「視界の左右どちらか半分しか見えない」
という症状はまず起こりません。
どちらが原因でも早急に治療を
開始しなければ失明や、
命を落とす危険が高い病気です。
ただちに救急車を呼び、
救急搬送を依頼しましょう。
脳梗塞を含めて、
脳卒中になると「眼球の動きが異常になる」
ことが知られています。
片側の目だけ外側を向いている、
両眼が片一方に寄ったままなど、
異常な動きを起こすことがあります。
しゃっくり、耳鳴りなど
脳の延髄という場所で脳梗塞を起こすと、
しゃっくりが起こることがあります。
延髄は呼吸や心拍の調整など、
生命維持に欠かせない動きを担う場所です。
放置すると呼吸や心臓の動きに
影響する可能性がある、
危険な前兆です。
耳鳴りや立ちくらみが起こることもあります。
意識障害や言語障害、半身まひなど、
ほかの症状を併発しているかどうかで判断しましょう。
脳卒中の前兆となる初期症状
くも膜下出血など、
ほかの脳卒中の前兆も脳梗塞とほぼ同じです。
ここでは出血性脳卒中によく見られる症状を紹介します。
激しい頭痛
脳出血でよく見られる前兆に、
激しい頭痛があります。
「バットで殴られたような痛み」
「今まで経験したことがない激痛」
と訴える方もいるほどで、
とても耐えられない激痛に襲われます。
痛みのあまり嘔吐することもあります。
特に、くも膜下出血の場合は気絶するほどの
激痛を伴うことがあります。
ただちに救急車を呼び、
患者さんを安全な姿勢で休ませましょう。
嘔吐がなければ水平に寝かせ、
毛布などで保温します。
嘔吐があると気道を詰まらせるので、
回復体位
(横向きややうつ伏せ気味の姿勢)を取らせます。
顔のゆがみ、半身の麻痺、しびれ
脳梗塞と同様に、
出血性脳卒中でも半身まひが起こります。
半身まひの中で、
一番分かりやすいのは顔の表情でしょう。
突然まひが出始めたら、
すぐに鏡に自分の顔を写して笑顔を作りましょう。
笑顔が難しいときは「イー、」と声を出すのも
判別しやすい方法です。
もし脳卒中になると、
左右どちらかの口角が上がらず、
だらりと垂れ下がったままになります。
奥歯の治療で麻酔をすると、
一時的に顔の一部が麻痺して動かなくなりますが、
それに近い状態です。
その場で安静にして、
ただちに救急車を呼びましょう。
いびき、不規則な呼吸
さっきまで元気に笑っていた人が、
突然意識を失っていびきをかき始めた…。
飲み会の席で起これば、
アルコールが回ったのだろうと
放置されかねない状態です。
急な昏睡からいびき、
不規則な呼吸は脳卒中の前兆のひとつです。
脳卒中を起こすと舌の根元が気道をふさいでしまい、
激しいいびきを起こします。
いびきは鼻呼吸が難しい風邪や鼻炎を
発症すると起こりやすい現象ですが、
その場合は声をかければすぐ
起きるので判別できます。
脳卒中の場合は、
寝ているのではなく意識を失っているので
呼びかけても目を覚ますことはありません。
呼びかけに応じないときもしくは
反応がいつもと明らかに違う時は、
ただちに救急車を呼んで下さい。
気持ちよく寝ていると解釈せず、
起こして確認することが大切です。
脳卒中でなくても激しいいびきを
かいて寝ている人は、
睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
放置すると脳卒中の発生リスクが上がるので、
できるだけ早めに呼吸器内科を受診して
治療を受けましょう。
すぐに病院へ行くべき「脳梗塞の前兆」
ここまでは脳梗塞の前兆となる
症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際には
すぐに病院に受診しましょう。
半身のしびれ、
顔のゆがみ、
ろれつが回らないなどの
症状の場合は、救急車の要請を
脳梗塞の典型的な症状は
「体の右半分、または左半分のしびれ、麻痺」です。
寝違えなどで腕がしびれることがあっても、
時間が経てば徐々に治っていくものです。
脳梗塞や脳卒中のしびれや麻痺は、
放置するとどんどん「体の片側だけに」広がります。
米国脳卒中協会では
「ACT FAST」(アクトファスト)という
3つのテストを行うことを推奨しています。
F(Face・顔がゆがんでいる、口角が片側だけ上がらないなど)、
A(Arm・両手を横に上げてしばらく経つと
片腕だけ下がる。
腕や足が上がりにくい、しびれるなど)、
S(Speech・かんたんな言葉を発して
意味は理解できるか、
ろれつは回っているか、
他人のことばが理解できるか)の3つをチェックし、
1つでも当てはまればT(Time・すぐに)
救急車を呼びましょう。
周囲の人は患者さんをあおむけに
(嘔吐している時は回復体位で)寝かせ、
頭を動かさないようにして体を保温しましょう。
余裕があれば発症した時刻
(できれば分単位で)と症状を記録し、
救急隊員に伝えると治療に大変役立ちます。
受診・予防の目安となる
「脳梗塞の前兆」のセルフチェック法
- ・体の半身(右半分、または左半分)だけ麻痺が現れる場合
- ・突然意識を失う場合
- ・突然ろれつが回らなくなる、言葉が理解できなくなる場合
脳梗塞の前兆となる
症状を予防する方法
突然人生を奪われ、
深刻な後遺症に苦しむリスクが高い脳梗塞ですが、
きちんと管理すれば
発症リスクを下げることができます。
ダイエットを除けばどれも比較的簡単ですが
「毎日必ず続ける」ことが
求められることばかりです。
服薬はうっかり忘れを防ぐために、
カレンダー型の薬ケースに入れておく、
飲む時間にアラームを鳴らすなど、
工夫をするのが効果的です。
面倒だからと通院や服薬を止めると、
脳梗塞リスクが上昇します。
高血圧治療を怠らない
高血圧治療は脳梗塞や脳卒中を防ぐ
最大の方法です。
血圧が高いと血管への負担が増し、
血管を塞ぎ、破裂する原因になります。
日本では自分が高血圧であることを知らない、
知っていても治療をしない人が
1,400万人いると言われ、
脳卒中の潜在的リスクになっています。
高血圧を予防できれば、
日本で発生する脳卒中を50%減らすことができる、
という試算があるほどです。
高血圧の改善は減塩と適度な運動が効果的で、
特に「減塩」は必須です。
日本人は塩分摂取が多い傾向があり、
脳卒中は昔から国民病でした。
まずは「ラーメンやうどんの汁を残す」
「練り物、肉加工品はほどほどに」
「味付けは塩分を減らし、
柑橘類の搾り汁を加えて満足度を上げる」など、
すぐできる方法からチャレンジしてみましょう。
それでも改善しないときは降圧剤を服用します。
糖尿病の血糖値管理・肥満の解消
高血圧の次に脳卒中の原因になるのは、
脂質異常症や糖尿病です。
糖尿病の方は血管がもろくなりやすく、
動脈硬化の原因になります。
脳梗塞には3つの種類がありますが、
肥満や糖尿病の方は特に血管の中に
プラークが溜まる「アテローム血栓性脳梗塞」
を発症するリスクが上がります。
糖尿病の治療は長期戦です。
定期的に内科か糖尿病外来を受診し、
血糖値を把握する必要があります。
バランスの良い食生活、
適度な運動、適切な投薬で血糖値を
下げることができます。
定期健診で血糖値が要検査という
結果になった方は、
早めに内科か糖尿病外来を受診しましょう。
肥満と高血圧を併発している方は、
特定保健指導を受けて実践すると、
どちらも改善する傾向があります。
心房細動の検査と治療
心房細動とは不整脈の一種で、
心臓の上部にある心房が収縮せず、
ブルブル痙攣する症状です。
高齢になると増える傾向があり、
動悸、息切れめまい、
倦怠感など自覚症状が現れることもあります。
心房細動を起こすと心臓の中に
血液が溜まったままになり、
血栓を作る原因になります。
血栓が脳の血管まで流れると、
脳梗塞の中でも最も重症化しやすい
「心原性脳塞栓症」を発症します。
心原性脳塞栓症は脳の太い血管を
血栓が塞ぐため、
脳の広範囲に深刻なダメージを与えます。
心房細動による脳梗塞予防のためには
血液をサラサラにする薬は欠かせません。
また、
異常な動きをする心筋の伝導路を焼き切る手術
「カテーテルアブレーション治療」を行うことがあります。
禁煙
喫煙は肺がんの原因になることで有名ですが、
脳梗塞や脳卒中リスクも上げます。
喫煙による脳卒中リスクは男性1.4倍、
女性2.0倍で、女性の方がより深刻なダメージを受けます。
タバコの成分は動脈硬化を悪化させ、
血管を縮める作用もあり、
脳卒中を引き起こしやすくします。
他の病気リスクもあるため、
喫煙は今日から止めましょう。
禁煙外来で禁煙補助薬を使いながらチャレンジすると、
7~8割の方は禁煙に成功します。
<参考:丸山 潤(医師)>
1喧嘩はするな、
2意地悪はするな、
3過去をくよくよするな、
4先を見通して暮らせよ、
5困っている人を助けよ、
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