2024/7/30

老化は遺伝よりも食事、運動、 生活習慣が影響  育った環境との関係を 実験データで徹底解剖

 
 
 
 
 
 
 

老化は遺伝よりも食事、運動、

生活習慣が影響 

育った環境との関係を

実験データで徹底解剖

 

 
 
 
 
 
遺伝子と老化の相関関係は? 

 

 

遺伝子と老化の関係は複雑だ。

 

先天的な要因(=遺伝)がヒトの老化に与える影響は2割弱、

残り8割ほどは後天的要因(=環境)であるといわれている。

 

食事や運動、生活習慣など後天的要因に注目する

生命科学者の早野元詞氏

 

 

ジェネティックとエピジェネティック

 

遺伝子の働きは実に不思議です。

 

父親と母親から全く同じDNA配列を受け継いだ

一卵性の双子であっても、

 

性格や顔つきも変わっていきますし、

寿命も異なります。

 

科学者として少々ふさわしくない表現をしますと、

「遺伝子は、柔らかい/柔軟性が高い」ように見える。

 

だからこそ、ますます興味深い。

 

遺伝子こそまさに、動的変化の主役だといえます。

 

先天的な要因(=遺伝)がヒトの老化に与える影響は

2割弱といった程度です。

 

つまり、

残り8割ほどが後天的要因(=環境)であるならば、

その変化を解明すれば、

 

老化という動的変化の8割がたの

イメージはつかめるということです。

 

しかし、

そうなかなかすっきりとはいかないのが、

遺伝子の不思議なところです。

 

「ジェネティック」と「エピジェネティック」を起点にしながら、

その老化の核心をさらに見つめていきたいと思います。

 

 

「ジェネティック(genetic)」の説明から始めましょう。

 

英語の遺伝子「gene」に「-ic」(〜のような)

という接尾辞が付いた形容詞で、

「遺伝の」「遺伝的な」「遺伝に関わる」

という意味になります。

 

 

そもそも遺伝子とは何か。

 

 

ヒトの身体をコンピュータに喩えれば、

遺伝子はそれを動かすプログラムに当たります。

 

私たちの身体は遺伝子の指令によって生きているからです。

 

簡単にいえば、その遺伝子の指令によって、

私たちが生きていくためのさまざまなタンパク質が作られる。

 

その働き者の遺伝子(タンパク質を作るレシピ)は、

体内の全ゲノムDNAの約1.5%に相当します。

 

ちなみに残りの約98%のDNA配列は、

エンハンサーやプロモーター配列など遺伝子の使い方を

調整する機能を持つものから、

未だに機能不明な配列まで、

最前線の研究課題です。

 

 

うとしていた料理ができなくなる。

 

押入れで喩えれば、本来使うべき道具ではなく、

間違って別の道具を使ってしまい、

きちんと掃除できなくなる。

これがエピゲノムです。

 

 

それに対し、何らかの原因によって

DNAそのものが損傷するなど、

 

DNA配列自体に変化が起きる現象を

ミューテーション(変異)と呼びます。

 

ミューテーションでは、

DNAを構成している4つの塩基

A、T、C、Gのどれかが、

 

別の塩基に置き換わります。

 

あるいは、ある塩基が抜け落ちたり、

新しい塩基が加わったりもします。

 

これもレシピ本や押入れの喩えで説明するなら、

レシピとして書かれている文字が変わってしまったり、

 

押入れの中に入っている掃除機が

ホウキやチリトリになってしまうのです。

 

ミューテーションによって生じる典型的な病が、

がんです。

 

エピゲノム変化—DNAそのものを損傷せずとも、

遺伝子の「オン/オフ」(=発現)に

影響を与える変化—は

「RCM(Relocalization of Chromation Modifier:

染色体修飾因子の再配置)モデル」と呼ばれ、

 

人体はそれによって罹患したり、

老化が進んだりします。

 

また、

ミューテーションによっても老化は起こります。

 

ということは、

エピゲノム変化やミューテーションを起こさないようにすれば、

老化も抑えられるというわけです。

 

 

どうすれば、エピゲノム変化を抑えられるのか。

 

 

たとえばメバルの一種にロックフィッシュと

呼ばれる魚がいます。

 

ロックフィッシュの中には、

200歳ぐらいまで生き続けるものがいます。

 

 

なぜ、そんなとてつもない長寿を保てるのか。

どうやらロックフィッシュたちは、

長寿に関わる遺伝子のネットワークを備えているようです。

 

この遺伝子のおかげでエピゲノムやミューテーションが起こりにくい。

 

だから年老いたりしない、

すなわち長生きできるというわけです。

しかもロックフィッシュは、

基本的に深海に生息しています。

 

深海は周囲の温度が低く、酸素濃度も低い。

 

そんな環境では生き物はあまり動き回らないため、

酸化ストレスなどからも守られているようです。

 

 

一方で私たちヒトは、

遺伝子レベルで見れば、

本来の寿命は40〜50年ぐらいに

設計されているようです。

 

心臓を動かしている心筋細胞も、

本来の寿命は55年ぐらいとされています。

 

もちろん、

人体のパーツの中には角膜のように、

100年ぐらい保つものもあります。

 

けれども、心臓や肺など四六時中動いている臓器は、

それだけ早く疲弊してしまうのです。

 

 

 

遺伝子は天使にも悪魔にも

 
 

けれども、人体には、

こうしたエピゲノム変化を修復する機能も備わっています。

 

その代表選手が、

長寿遺伝子サーチュインです。

 

押入れがごちゃごちゃに乱れてくる(=老化する)と、

ハウスキーパー(=サーチュイン遺伝子)がやってきて、

元通りに整理整頓(=修復)してくれます。

 

もちろんサーチュインだけではなく、

先述のFOXO3などいろいろなハウスキーパーが存在します。

 

それで元通りとなれば一件落着というわけです。

 

 

他にも長寿遺伝子として知られているものに、

APOEがあります。

 

以前、目にした興味深い論文に、

FOXO3やAPOEに遺伝子多型

(SNPs)のある人は長生きする、

 

というものもありました。

 

遺伝子多型を簡単に言い換えれば、

個人ごとの配列の違いで、

1塩基の違いをSNP(スニップ)といいます。

 

とはいえ、

その遺伝子のエピジェネティックな変化については

明らかにされていません。

 

特にAPOEについては、

「APOEε4 」がアルツハイマー病の

リスクを高めるのに対して、

「APOEε2 」と「APOEε3 」は

そのリスクを下げるといわれています。

 

 

同種の遺伝子が、

天使にも悪魔にもなるわけです。

 

 

要は、

こうした遺伝子配列の微妙な差異が、

ひいては寿命の違いになるのです。

 

 

想像してみてください。

押入れのハウスキーパーも、

生涯を通じて万能というわけではない。

 

紫外線に何度もさらされたり、

酸化ストレスにたびたび傷つけられれば、

さすがのハウスキーパーたちも疲れてしまう。

 

疲れ果てたハウスキーパーの中には、

修復手段を忘れる者も出てくるでしょう。

 

そうなると押入れの秩序は崩壊、

すなわち老化の始まりです。

 

 

身体はナマモノだとよくいわれますが、

度重なる遺伝子レベルの修復作業は、

修復自体を不可能にしてしまう。

 

ですから、

DNA損傷型エピゲノム変化を起こすような要因、

言い換えれば紫外線を浴びたり

酸化ストレスを引き起こす行為は、

 

できる限り避け続けるほうがいいのです。

 

 

<参考:早野元詞(はやの・もとし)> 
 
  


 

1喧嘩はするな、
2意地悪はするな、
3過去をくよくよするな、
4先を見通して暮らせよ、
5困っている人を助けよ、

 

 

 

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