2024/10/11

やっぱり火星に水はあった! でも砂漠のように乾いた星のどこに?

 
 
 
 
 
 
 
 
 

やっぱり火星に水はあった!

でも砂漠のように乾いた星のどこに?

 
 
 
 
 
火星に接近するMAVEN
 
 
 
 

 

(小谷太郎:大学教員・サイエンスライター)

 

2024年9月26日、

広島大学の片山郁夫教授と

海洋研究開発機構(JAMSTEC)の

赤松祐哉研究員が、

火星の地下に水が存在する

可能性があるという

研究結果を発表しました(※1)。

 

火星というと、

もしかしたら生命がいるのではないか、

 

いやそんな莫迦なことあるわけないだろ、

などと昔から果てしない議論が続いている惑星です。

 

 

火星にはほとんど大気がなく、

地表はからっからに乾燥していることが

20世紀に明らかになると、

 

生命期待派の旗色は悪くなりました

(が、完全に黙ることはありませんでした)。

 

 

どうして火星は地球とちがって、

冷たく乾いた砂漠の惑星になってしまったのでしょうか。

 

 

最近、

これを調べるために送り込まれた探査機たちが、

驚くべき可能性を相次いで報告してきました。

 

 

 
莫大な量の水が隠されていて、
 
そのかなりの割合は液体の状態だというのです。
 
 

火星の地下には太古の海が

眠っている可能性があるのです。

 

そうなると、

生命期待派の勢いも復活です。

最近の火星研究の進展を解説しましょう。

 

 

火星の太古の海

 

30億年以上の昔、太陽も惑星もまだ若かったころ、

火星には濃い大気があり、大洋が広がり、

雨も降れば川も流れていたと考えられています。

 

その証拠に、火星の地表には、

いたるところに川の作った地形や

大洪水の跡が残されています。

 

 

どうしてみずみずしい世界だった火星が

現在からからに干からびてしまったのかというと、

それは大気が失われたせいだとされています。

 

現在の火星の大気は

地球の0.5%程度しかありません。

 

大気が失われると、温室効果もなくなり、

平均気温が-60℃程度にまで下がってしまいました。

 

これでは水どころか二酸化炭素まで凍りつきます。

 

また気圧が低いと、

水という物質は液体の状態になれません。

 

火星の地表には、

氷(固体)か水蒸気(気体)の状態でしか

水が存在できないのです。

 

(ただし何らかの濃い水溶液なら、

凝固点降下という現象のため、

液体として存在できる場合があります。)

 

こうしたことが判明したのは20世紀のことです。

火星の失われた大気はおそらく宇宙空間へ

逃げていったのだろうというのが当時の推定でした。

 

火星の重力は弱いため、

大気分子(が分解して生じた原子)を保持できず、

大気は徐々に宇宙に逃げ散ったというシナリオです。

 

 

大気が薄くなれば海水は蒸発して水蒸気となり、

これまた大気分子と同様の運命をたどって

宇宙空間に失われるでしょう。

 
 
 
「太陽風」と呼ばれる高速の陽子や電子などを、
 
四方八方へ撒き散らしています。
 
 
こうした高速の粒子が惑星に飛来して
 
大気分子に衝突すると、
 
大気分子を壊して宇宙空間へ弾き飛ばします。
 
 
こうした効果も火星の大気消失を
 
後押ししたのだろうと考えられました。
 
 
 

(なお、地球は火星よりも強い地磁気を持ち、

地磁気は高速粒子を跳ね返す

バリアーのような役割を果たすので、

これもあって地球の大気は消失をまぬがれた、

と説明されました。)

 

 

これが20世紀に考えられた、

現在の火星が酷寒の砂漠になった訳です。

 

 

 

 
太陽風が火星の大気を吹き飛ばしているイメージ。