2025/1/14

ヒトゲノムの43%を占める 「動く遺伝子」と老化との関係

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

ヒトゲノムの43%を占める

「動く遺伝子」と老化との関係

 
 
 
 
 
 

 

地球は10万年~2万年のスケールで

氷期と間氷期を繰り返している。

 

ヒトはそうした大きな環境変化に順応しながら

命を永らえてきたが、

なぜそのようなことができたのか?

 



その理由のひとつとして

「動く遺伝子(転移遺伝子)」の

存在があるからと言われている。

 



動く遺伝子とはかつてはジャンク遺伝子と呼ばれ、

ゴミのような扱いを受けてきた遺伝子のこと。

 

 

その後の研究で、

ダイナミックな環境の変化に順応するため、

遺伝子の一角の塩基配列を丸ごと変え、

ゲノム構造を変化させることがわかった。

 

 

それはまるで遺伝子が動いているかのように

見えることから「トランスポゾン」と呼ばれている。

 



ちなみにヒトの遺伝子は、

DNAが全体の2%程度で、

動く遺伝子が43%。

 

残りはその残骸、

未解明なものと言われている。

 

 



トランスポゾンの話を進めるにあたって、

改めてゲノム、染色体、遺伝子、

DNAの関係についておさらいをしておきたい。

 



そもそもヒトはおよそ60兆個(37兆個との説もある)

の細胞でできている。

 

細胞ひとつひとつには細胞核があり、

その中に遺伝情報が刻まれた

DNA(デオキシリボ核酸)が入っている。

 

 

DNAは2重らせん構造をしたひも状の物質で、

A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の

4種類の塩基が並んでいる。

 

 

ヒトは細胞内に60億塩基対のDNAを持っているが、

この塩基の並び方の一部でも

変わると病気になることがある。

 

 

 

 

 DNAは細胞内でヒストンと呼ばれる

棒状のタンパク質に巻き付いた

複合体(ヌクレオーソム)を作っている。

 

それが巻き取られたのがクロマチンで、

規則正しく折りたためたものを染色体と呼ぶ。

 

ヌクレオーソムにおけるヒストンは

アセチル化(アセチル基が付与されること)を受けると、

 

ヌクレオーソムが緩んで転写が活発する。

 



DNAが遺伝情報として働くためには、

一部がRNAに転写されてさらにタンパク質に

「翻訳」されなければならない。

 

翻訳とはDNAの並びをタンパク質を作る

アミノ酸の並びに変換することを言う。

 

 

DNA上でタンパク質に翻訳される領域が

遺伝子(DNAの2~5%程度)で、

ヒトはおよそ2万個の遺伝子があるとされる。

 



一部の例外を除いて1人の体の細胞は

すべて同じDNAを持つが、

 

細胞の種類によって転写・翻訳される遺伝子の

組み合わせが異なることで、

肝臓で肝細胞になったり、

神経細胞になったりする。

 



ただし、

遺伝子領域はすべてタンパク質に

翻訳されるわけではない。

 

翻訳される部分をエクソンといい、

翻訳されない部分をイントロンという。

 

転写されるときは、

まず未成熟のメッセンジャーRNA(mRNA)として

全体が転写され、

 

その後、

スプライシングと呼ばれる仕組みにより、

イントロンが切り離されて

エクソン同士がつなぎあわされ、

 

成熟mRNAとなる。その後、

ようやくタンパク質へ翻訳されるのだ。

 

 

 

 動く遺伝子であるトランスポゾンの数や

割合は生物ごとに異なり、

 

数%~80%とばらつきがある。

 

普段は眠っているこの遺伝子は、

活性化することでDNAの塩基配列を変えるため、

 

突然変異の原因となり、

生物進化を促すものと考えられている。

 

 



トランスポゾンは特定のDNAの断片を切り出し、

別の場所に再挿入することで移動する。

 

DNAトランスポゾンとレトロトランスポゾンに大別され、

 

前者は自身のDNA配列を切り出して

別のゲノムDNA配列に挿入する、

 

カット&ペースト式で移動する。

 

後者は、

自身の配列をRNAに一度転写してからDNAを作り、

それをゲノムの別の場所に挿入する

コピー&ペースト方式で移動する。

 

 

ただし、

多くの哺乳類はDNAトランスポゾンの

機能を失っていることがわかっている。

 



ヒトのレトロトランスポゾンが活性化することで

環境の大きな変化に順応する一方で、

 

DNAの損傷につながり、

病気を発症するケースがあることもわかっている。

 

現在、

その数は血友病、先天性の疾患、

がんなど120種類を越えると報告されている。

 




では、レトロトランスポゾンは

老化とどのような関りがあるのか。

 

ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部

客員教授の根来秀行医師がいう。

 

 

「老化細胞は炎症性サイトカインやケモカイン、

細胞外マトリックス分解酵素などを分泌する

SASPによって周囲の組織に慢性炎症を誘導し、

加齢性疾患を引き起こすがことがわかっています。

 

 

老化細胞内の分子の動きは前期と後期とで変わり、

老化初期ではレトロトランスポゾンから

産生されたメッセンジャーRNAのレベルは低いため、

 

SASPには影響を及ぼしません。

 

しかし、

老化後期になると

レトロトランスポゾンDNAが増加するため、

 

これがインターフェロンαや

インターフェロンβをコードするIFN遺伝子群の

転写につながり、

 

これらのインターフェロンタンパク質が

SASPに関与します」