2025/5/8

隠れ脳梗塞とは? Medical DOC監修医が 隠れ脳梗塞の症状・ 原因などを解説します。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

隠れ脳梗塞とは?

Medical DOC監修医が

隠れ脳梗塞の症状・

原因などを解説します。

 

気になる症状がある場合は

迷わず病院を受診してください。

 

 

 

「隠れ脳梗塞」とは?

 

隠れ脳梗塞とは症状が全くでない

脳梗塞のことであり、

 

脳ドックなどで思いがけず

発見されることがあります。

 

前頭葉は思考や判断、

感情のコントロール、運動などに関わる機能、

 

後頭葉は視覚に関わる機能、

 

側頭葉内側は記憶に関わる機能というように、

 

脳の機能は部位・領域ごとで異なります。

 

そのため、

脳梗塞を発症すると手足が動かなくなったり(麻痺)、

うまく話せなくなったり(構音障害・失語)、

しびれなど感覚の異常がみられたり

(感覚鈍麻・異常感覚)、

視野が欠けたり(視野欠損)します。

 

脳梗塞を発症した部位に応じた症状が出現しますが、

機能的に重要性の高い部位でない場合や、

 

脳梗塞の病変が小さい場合には

症状がみられないことも少なくありません。

 

このように症状がみられず偶発的に

発見される脳梗塞を隠れ脳梗塞といいます。

 

 


Cardiovascular Health Studyでは

隠れ脳梗塞がある人では、

 

ない人と比較して年間の脳梗塞発症率が

2倍になったとの報告があり、

 

別の研究では隠れ脳梗塞があると

脳卒中の発症リスクが

4倍になったとの報告もあります。

 

 

また認知症を合併するリスクが

高くなることも報告されており、

見つかった場合には注意が必要な疾患です。

 

 

「隠れ脳梗塞」と

「脳梗塞」の違いは?

 
 

前述のように隠れ脳梗塞とは症状のない

脳梗塞のことであり、

 

症状の有無が主な違いとなりますが、

隠れ脳梗塞と脳梗塞では

治療方針にもやや違いがあります。

 


脳梗塞とは脳に血液を送る動脈に

血栓などの塞栓物が詰まったり、

 

動脈硬化や動脈解離により

血管が狭くなったりすることで、

 

脳細胞に十分な血流が送られずに

脳細胞が壊死してしまう疾患であり、

 

発症した場合には原因検索を行い、

抗血栓療法(血液サラサラの薬)を含む

病態に応じた再発予防が必要となります。

 


隠れ脳梗塞でも微小血管障害などの

脳梗塞を起こすような背景があると想定され、

 

今後に脳梗塞や認知症を発症する

リスクが高くなるため、

 

脳梗塞に準じたリスク評価や

再発予防のための治療を行うことが

望ましいと考えられていますが、

 

抗血栓療法の有用性は確立されておらず、

多くの場合は血圧管理などを

中心とした治療を行うこととなります。

 

 

見落とされやすい脳梗塞の症状

 
 

隠れ脳梗塞は症状のない脳梗塞です。

 

しかし、

隠れ脳梗塞と判断された人の中には、

実際は症状があったにも関わらず、

自身・周囲が気づかずに隠れ脳梗塞と

判断されていたケースもあります。

 


実際に脳梗塞による症状で

あったかどうかの判断はMRIなどの

画像所見と合わせての評価が必要であり、

 

脳神経内科や脳神経外科などの

専門診療科でなければ、

判断するには難しいと思われます。

 

ここでは見落とされやすい

脳梗塞の症状についてご説明します。

 

 

認知機能低下

 

脳梗塞の症状として最も

見落とされやすい症状は認知機能低下です。

 

認知機能低下は徐々に悪化していたとしても、

本人・周囲ともに自覚しづらく、

特に高齢者ではアルツハイマー型認知症や

加齢性認知症などその他の原因でも

認知機能の悪化は起こるため、

 

脳梗塞の症状として気づかれにくくなりがちです。

 


ある日からおかしな発言がみられるようになった、

物忘れがひどくなったなど、

急性に認知機能が悪化して続く場合には

脳梗塞の症状の可能性があり、

注意が必要です。

 

 

歩行障害・軽度の麻痺

 

軽度の麻痺による歩行障害も

見落とされることのある症状です。

 


高齢者では長距離歩行が難しいなど

普段から歩行に対しての不安のある方が多く、

 

発熱などにより歩行が困難になったことを

経験されている方も少なくありません。

 


そのため、

起床時などに下肢の脱力がみられた

場合も年齢のせいと判断して

脳梗塞を疑わない場合が少なくありません。

 


左右どちらかの脱力を自覚した場合には

脳梗塞による症状の可能性があるため、

注意が必要です。

 

 

隠れ脳梗塞の主な原因

 

隠れ脳梗塞は造影CTやMRIなどでは

描出されない微小血管の障害を

原因とする脳梗塞(ラクナ梗塞)が

多いといわれており、

 

高血圧が最大のリスク因子として知られています。

 


その他に2型糖尿病や高コレステロール血症、

メタボリックシンドロームなどの

生活習慣病、肥満などで発症しやすく、

 

睡眠時無呼吸症候群、

心房細動、慢性腎不全、

軽動脈狭窄などで発症リスクが

高くなるといわれています。

 

 

高血圧

 

高血圧はこれまでの複数の

疫学研究で隠れ脳梗塞の最大の

リスク因子として報告されています。

 

また、薬物療法を含む積極的な医療介入を行い、

血圧を120/80mmHg未満とすることで、

 

隠れ脳梗塞や心筋梗塞や脳梗塞などの

心血管イベントの発症リスクが

低くすることができるといわれています。

 

 

糖尿病・高コレステロール血症・

メタボリックシンドローム

 

糖尿病や高コレステロール血症のある方、

メタボリックシンドロームの方では

隠れ脳梗塞を持つ方の割合が

多いことがしられています。

 


糖尿病や高コレステロール血症などにより

動脈硬化が進むと高血圧も合併しやすくなり、

 

慢性腎不全や頸動脈狭窄などの

その他のリスクとなる疾患も発症しやすくなります。

 

また、

肥満などにより睡眠時無呼吸症候群となれば、

さらに心血管イベントのリスクが高まります。

 


バランスの取れた適度な食事、

適度な運動などを行い、

生活習慣を適切に保つことが重要です。

 

 

心房細動

 

心房細動は脳梗塞の大きな要因の一つであり、

隠れ脳梗塞の原因になることもあります。

 

心臓には全身から血液を受け取る右心房、

肺に血液を送り出す右心室、

肺から血液を受け取る左心房、

全身に血液を送り出す左心室がありますが、

 

心房細動では全身や肺から血液を受け取る

心房が痙攣してしまうような状態となり、

 

心房内に血液が滞留して血栓(血の塊)を

作りやすくなります。

 

この血栓がちぎれて飛んでいくことで

脳血管を閉塞して脳梗塞を発症します。

 


心房細動の出現時には頻脈となって

動悸を自覚することも多いですが、

自覚症状がない場合もあるため、

注意が必要です。

 

 

「隠れ脳梗塞」についてよくある質問

 

ここまで隠れ脳梗塞などを紹介しました。

ここでは「隠れ脳梗塞」についてよくある質問に

、Medical DOC監修医がお答えします。

 

 

隠れ脳梗塞は何人に一人の割合で

発症するのでしょうか?

 
 

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

島根県で行われた研究では隠れ脳梗塞は

40歳未満ではほとんど見られず、

年代ごとの発症率は40歳代で5%程度、

50歳代で10%程度、60歳代で20%程度、

70歳代で30%程度と加齢に従って

ほぼ直線的に増加すると報告されています。

50歳を越えたら10人に1人以上の割合で

隠れ脳梗塞を発症していることから、

症状がなくとも脳ドックなどで検査を受けることが良いでしょう。

 

 

隠れ脳梗塞はMRI検査で

発見することはできるのでしょうか?

 
 

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

はい、その通りで、隠れ脳梗塞はMRI検査で

発見することができます。

一方で、CT検査はMRI検査と比べて

濃度分解能が劣るので、

隠れ脳梗塞を見つけられない可能性があります。

 

 

 

まとめ

隠れ脳梗塞はその病気自体には症状はありませんが、

隠れ脳梗塞がある方では脳卒中の発症率が4倍、

認知症の発症率が2倍になるとの報告があり、

注意が必要な病気です。


脳ドックなどでの画像検査で偶然発見されますが、

40歳以降で発見されることが多くなり、

50歳代では10人に1人、

60歳代では5人に1人で発見されます。

 

高血圧などの生活習慣病のある方で発見されやすく、

発見された場合も血圧コントロールなどの

適切な治療を受けることで、

隠れ脳梗塞の増加や脳卒中、

認知症の発症を予防することが可能です。

40歳を越えたら脳ドックなどを定期的に受け、

早期発見・早期治療を心掛けることが重要です。

 

 

「隠れ脳梗塞」と

関連する病気

 
 

「隠れ脳梗塞」と関連する

病気は8個ほどあります。


各病気の症状・原因・治療方法など

詳細はリンクからMedical DOCの

解説記事をご覧ください。

 

 

内科の病気

 
 

脳神経内科・脳神経外科の病気

 
  • 一過性脳虚血発作
  • 内頚動脈狭窄症
 

循環器内科の病気

 
  • 心房細動
 

隠れ脳梗塞がある場合には脳卒中や

認知症の発症率が高くなる可能性が

あるため注意が必要です。

高血圧などの生活習慣病のある方で

見つかりやすいのですが、

血圧コントロールなどの適切な治療を受けることで、

隠れ脳梗塞の増加や脳卒中、

認知症の発症を予防することもできると言われています。

 

 

「隠れ脳梗塞」と関連する症状

 

「隠れ脳梗塞」と関連している、

似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細は

リンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

 

関連する症状

 
 

隠れ脳梗塞、というくらいなので

自覚する症状はほとんどないと思いますが、

振り返れば軽く症状が出現していた

ということもあるかもしれません。

 

脳梗塞は再発予防が重要ですので、

もし隠れ脳梗塞が見つかったら、

脳梗塞再発や他の病気の発症予防に

しっかりと対策をしていくようにしましょう。

 

  

<参考:>監修医師
村上 友太(東京予防クリニック)