
人はなぜ音楽を好むのでしょうか?
音楽の脳に対する影響を考えてみましょう。
音楽の起源は人類の歴史の
始まりとともにあり、
古代から文化や社会の中心的な
役割を果たしてきました。
感情や経験を表現する手段として、
現代に至るまで進化し続けてきており、
それは単なる娯楽にとどまらず、
人々の生活の中で重要な位置を占めています。
そんな音楽が脳に与える影響は多岐にわたり、
脳のさまざまな領域を刺激し、
感情調整、ストレス軽減、認知機能、
記憶などに貢献しているようです。
具体的な影響についてみてみましょう。
音楽は脳の報酬系という部位を刺激して、
脳内でドーパミンという快楽ホルモンの
分泌を促すことにより、
感情調整に重要な役割を果たします。
音楽を聴くことにより幸福感が増したり、
ストレスや不安が軽減されたりするのは
このためです。
したがって、
音楽療法は鬱(うつ)病や
不安障害などの
治療においても有効であることが
認められています。
また音楽を聴くことで、
脳の情報処理能力や集中力が向上するなど、
認知機能に対してプラスの効果を
もたらすとされています。
特に、
クラシック音楽やバロック音楽を聴くことで、
学習や作業の効率が上がるようです。
また試合前に音楽を聴いて
準備しているアスリートも多いですね。
さらに音楽は記憶力の
向上にも影響を及ぼし、
長期記憶の定着を助ける効果が
あるとされています。
特に、
特定のメロディーやリズムが
記憶の手がかりとして機能し、
情報の再生を容易にすることが
知られています。
これは「モーツァルト効果」としても知られ、
モーツァルトの音楽を聴くことで
一時的に知能指数(IQ)が
向上するという現象も報告されています。
脳に対する直接的な影響ではないですが、
音楽を通じて共感や連帯感が生まれ、
人々の間のコミュニケーションが円滑になり、
協力や協調性も育(はぐく)まれるといった、
社会的なつながりを強化する役割もあります。
日ごろ何気なく聴いている音楽ですが、
このようにみてみると人の脳、
ひいてはわれわれの生活にいかに
密接に影響しているかがわかります。
さあ、
あなたはどんな曲を聴きますか?
<参考:>
(済生会和歌山病院副院長兼脳神経外科部長 小倉光博)