2023/10/6

ミトコンドリアは母親からしか 伝わらない

 

ミトコンドリアは母親からしか 伝わらない

 
 
 
 
 

なぜミトコンドリアは母親からしか

伝わらないのか

 

 

 

 

ミトコンドリアは母方、

すなわち卵子からだけ遺伝して、

精子のミトコンドリアは子孫に伝わらない

というのは誰もが知っている事実だが、

なぜと問われると、

よく理解していないことに気づく。

 

ずいぶん昔、

精子にミトコンドリアはあっても、

ミトコンドリアDNAが欠損しているという

論文が発表されているが、

その後あまり追求されていない。

 

逆に、

ミトコンドリアがマイトファジーで破壊されるとか、

今はやりの説明が行われているが、

決定的ではない。

 

本日紹介する論文

 

今日紹介する米国、

トーマスジェファーソン大学からの論文は、

2013年に提唱された精子ミトコンドリアには

ミトコンドリアDNA(mtDNA)がないという説を

メカニズムも合わせて支持する研究で、

9月18日

Nature Genetics にオンライン掲載された。

 

 

タイトルは

「Molecular basis for maternal inheritance of human mitochondrial DNA

(人間のミトコンドリアDNAが母親から遺伝しない分子メカニズム)」だ。

 

 

研究の概要

 

この研究ではまず

単一精子のミトコンドリアDNAを調べて、

ミトコンドリアDNAの量を調べると、

バラツキはあるが、

一個の精子あたり0.5−1ミトコンドリア程度で、

実際には70個ほどのミトコンドリア

があることを考えると、

ミトコンドリアあたり正常の14%しか

DNAが存在しないことを確認している。

 

 

すなわち、

精子のミトコンドリアは卵子に入っても、

独自に分裂する能力が全く欠けている。

 

実際ミトコンドリア維持に必要な

DNA複製酵素や、

転写のエロンゲーション因子などは

全く見当たらないから、

遺伝するはずがない。

 

また、

この欠損は、

未熟な精母細胞から精細胞へと

分化する間に誘導されていることもわかった。

 

 

この原因を調べていくと、

核ゲノム(ヒトの場合10番染色体)に存在し、

ミトコンドリア内での転写を調節する

TFAM分子が精母細胞への分化の過程で、

ミトコンドリア内に移行

できなくなっていることを発見する。

 

TFAMはミトコンドリアの核になる蛋白質なので、

これがミトコンドリアにないと、

ミトコンドリアの複製は望めない。

 

 

TFAMがミトコンドリアに

移行できない原因をさらに探ると、

転写後のRNAを短くするスプライシング過程で

精子では5‘端が長いRNAができ、

普通とは異なるN末端側に長い配列を持っている

TFAMが精子だけで合成されていること、

そしてこの長い部分のセリン配列のリン酸化により、

ミトコンドリアの移行が積極的に

ブロックされていることを明らかにした。

 

 

この最後のメカニズムの

分子基盤は完全に示されていないが、

以上の結果は精子形成時に

TFAMのスプライシングを変化させて

TFAMが翻訳後リン酸化されるように

仕向けることで、

ミトコンドリアへの移行を阻む

メカニズムが進化していることがわかる。

 

 

感想・見解

 

以上が結果で、

今回初めてミトコンドリアの

母方遺伝の理由を納得した。

 

勿論全ての生物がこの方法を

用いているかはわからない。

 

今後他の動物と比較していくことで、

ミトコンドリア母方遺伝の始まりも

理解できるようになると思う。

 

 

<参考:Nature Genetics

 

 

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