<参考:審良 静男,黒崎 知博,村上 正晃>
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2024/8/6
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「痛風」や「アルツハイマー」の原因…? これらが「病原体」ではなく 「自己成分」が引き金となる驚愕の事実 |
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「痛風」や「アルツハイマー」の原因…?これらが「病原体」ではなく「自己成分」が引き金となる驚愕の事実20世紀のおわりから21世紀の今日にかけて、 免疫の“常識”は大きく変わった。
自然免疫が獲得免疫を始動させることがわかり、 自然炎症という新たな概念も加わり、
制御性T細胞の存在は確かなものとなり、 mRNAワクチンは現実のものとなった。
免疫を学ぶとき最初に読むべき一冊として 高く評価された入門書が最新の知見をふまえ、 10年ぶりに改訂。
免疫という極めて複雑で動的なシステムの中で 無数の細胞がどう協力して病原体を撃退するのか?
わたしたちのからだを病原体の攻撃から守る 免疫の基本的なしくみはどうなっているのか?
世界屈指の研究者達が解き明かした 「免疫の最前線」を少しだけご紹介しよう。
「内在性リガンド」の衝撃
1章で、TLR(トル様受容体)などのパターン認識受容体が、 リポ多糖、フラジェリン、非メチル化CpG配列など、 病原体に特有の成分を認識することを説明した。
このしくみにより、 自然免疫は病原体を認識して活性化し、 獲得免疫の始動へとつながっていくのだった。
その際、 「例外」があることを示唆し、 くわしくは10章であらためてのべると書いた。
本章では、 いよいよこの「例外」に関係する発見を紹介する。
じつは、 TLRなどのパターン認識受容体が認識する成分は、 病原体由来のものだけではなかった。
わたしたちのからだの自己成分の一部も 認識することがわかってきたのだ。
それらの自己成分を「内在性リガンド」という(図10‐1)。
自己細胞が大量に死んだときに出てくる成分などが多い。
TLRが病原体に共通する 特定の成分を認識していることがわかり、
自然免疫に対する見方が百八十度変わったのは 二一世紀直前のことだった。
その後、 内在性リガンドの登場により、 免疫研究の様相は一変したといっても過言ではない。
そのことをこれからお伝えしよう。
「例外」などという表現は、 いまや適切とはいえないだろう。
免疫学の新しい展開
二一世紀直前に判明したのは、 TLRなどのパターン認識受容体で 病原体を認識した自然免疫が、 獲得免疫を始動させるというストーリーであった。
それ以前の免疫学では、 自然免疫がそんな高度なはたらきをしているとは まったく考えられていなかったので、 このストーリーは衝撃をもって受けとめられた。
しかし、 さらにその先があった、というのが本章のテーマである。
前項でのべたとおり、TLRなどのパターン認識受容体は、 病原体に共通する特定の成分だけでなく、 一部の自己成分も認識していたのだ。
そうなると、マクロファージ、 好中球などの食細胞は、 病原体だけでなく内在性リガンドを認識しても活性化し、 炎症をおこすことになる。
病原体が引きおこす炎症に対して、 病原体がかかわらないこの炎症を「自然炎症」という。
自然炎症の代表的な例は、 からだのなかで大量の細胞が ネクローシスをおこして死ぬような場合だ。 からだのなかで細胞が死ぬパターンとして 大きく二つの様式がある。
アポトーシスとネクローシスだ(図10‐2)。
アポトーシスが誘導されると、 細胞膜につつまれたまま内容物が分解され、 最後は食細胞が丸ごと食べて処理する。
一方、ネクローシスでは、細胞膜が破れて、 内容物が分解されずに飛び散る。
外傷や火傷、薬物、放射線などが誘因となる。
アポトーシスで細胞が死んだのであれば、 DNAやRNAなどはすぐに分解されてしまうので、 食細胞のパターン認識受容体が感知することはない。
ところがネクローシスで細胞が死んだ場合、 それも大量に死んだ場合は、
分解されない大量のDNAやRNAなどが 食細胞のパターン認識受容体までたどりついてしまう。
自然炎症は様々な疾患の原因…?
RNAは、ヒトでもウイルスでもほとんど変わりがないので、 パターン認識受容体に認識される。
DNAのCpG配列も、 なかにはメチル化されていない領域もあり、 これも認識される。
さらに、 ミトコンドリアDNAにいたっては、 もともと微生物由来のため、 まったくメチル化されていないので、 当然CpG配列が認識される。
こうして食細胞は活性化して炎症がおこる。
自然炎症がなんのためにおこるのか、 まだはっきりとわかっていないが、 組織の修復にかかわっているという考えが有力だ。
自然炎症がおこると、 マクロファージや好中球が集まり、 損傷部位が取りのぞかれる。
さらに修復のための専門細胞が集まり、 組織の再建にとりかかる。こうして組織は修復される。
内在性リガンドによって食細胞が活性化するのだから、 当然、樹状細胞も活性化する。 その場合、 自己反応性のナイーブT細胞がほとんど存在しないことと、 制御性T細胞が存在することにより、 獲得免疫が始動されることはない。 しかし、 もし自己反応性のナイーブT細胞が活性化してしまったら、 と考えると少々危うい。 また、 パターン認識受容体はほぼ全身の細胞に分布しているため、
内在性リガンドで自然炎症をおこしうるのは、 マクロファージなどの食細胞だけでなく、 ほぼ全身の細胞ということになる。
この実例はあとでのべる。
自然炎症に注目が集まっているのは、 自然炎症がさまざまな疾患の原因になっている 可能性が出てきたからだ。
痛風、アルツハイマー病、 動脈硬化、糖尿病―― これまでたしかな原因がわかっていなかったものが多い。
痛風はマクロファージがおこす自然炎症
痛風は全身の関節(とくに足の親指の関節) で急性の炎症がくりかえしおこる病気で、 本人にしかわからない激痛をともなう。
原因となるのは血液中の尿酸である。
尿酸は細胞の老廃物で、 増えすぎると結晶となって関節に付着し、 これを食細胞が取りこむと炎症がおこる ことまではわかっていた。
だが、なぜ炎症がおこるのかは不明だった。
これがまさに自然炎症だったのである。
少し複雑になるが、 そのメカニズムを説明しよう。
細胞内パターン認識受容体のひとつにNLRP3がある。
NLR(ノッド様受容体)の仲間だ。
NLRP3が病原体の感染によるストレスを感知すると、 インターロイキン1βというサイトカインが放出される。
これは強く炎症をおこす作用のあるサイトカインだ。
食細胞の細胞質にはNLRP3があり、 食細胞が尿酸結晶を取りこむと、 細胞が刺激され(細胞にストレスがくわわり)、 インターロイキン1βが放出される。
痛風の炎症は、 こうして放出されるインターロイキン1βがおこしていたのである。
インターロイキン1βが放出されるまでの 過程を足早に説明しよう(図10‐3)。
食細胞が尿酸結晶を細胞内に取りこむと、 尿酸結晶の刺激でミトコンドリアが損傷する。
するとSIRT2という酵素のはたらきが低下し、 細胞内の輸送路である微小管にアセチル基という分子がつく。
その結果、損傷したミトコンドリアが微小管の上に乗り、 細胞の中心部の小胞体まで移動する。
こうして小胞体のNLRP3と、 ミトコンドリアがもつ部品ASCがそろい、
さらにカスパーゼという部品もくわわって 複合体が組みあがる。
この複合体をインフラマソームという。
インフラマソームは、 インターロイキン1βをマクロファージ内で 成熟させて外に放出する。
引きつづいて強い炎症がおこり、 激痛が走ることになる。
痛風の特効薬として知られるコルヒチンは、 微小管をこわすことでミトコンドリアを移動させず、
インターロイキン1βの放出を阻止することがわかった。
しかし、 細胞内の輸送をになう微小管をこわして しまうことによる副作用もある。
筆者(審良)らは、 微小管をこわすことなくミトコンドリアの 移動をさまたげる物質を見つけており、 新薬になり得るのではと期待している。
候補薬の一部は臨床試験にはいっている。
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