毎日、熟睡できていますか?
睡眠が大事とわかってはいても、
年齢が上がるとともになかなか
寝付けなかったり、
途中覚醒してしまうことも...。
熟睡の習慣のカギを握るのは、
「オレキシン」「レプチン」「グレリン」
といった神経伝達物質です。
いずれも摂食行動もコントロールする
ホルモンなので、
睡眠と食事には大きなかかわりがあります。
まずは食習慣を改善し、
睡眠力を高めましょう。
空腹のまま就寝しない
空腹時は、空腹ホルモン「グレリン」が
オレキシンを活性化させて「覚醒せよ」
の指令が出るため、
なかなか眠れなくなります。
「就寝前に空腹を感じたら、
適度に食べることは悪いことではありません。
寝る1時間ほど前に血糖値を緩やかに
上げるものを少しだけ食べたほうが
寝つきはよくなります」と、
チーズやヨーグルト、ナッツ、
キウイフルーツ、いちごなどがおすすめです。
動物性・植物性のたんぱく質をしっかり摂る
オレキシンを抑制し、
睡眠の改善につながるレプチンを増やすには、
たんぱく質をしっかり摂ることが大切。
「ポイントは、動物性、植物性のたんぱく質を
バランスよく摂取すること」と、
奥村先生は話しています。
肉ばかりでなく、魚、卵、チーズ、
豆類などをまんべんなく食べましょう。
レプチンは食欲を抑制するため、
質の良い睡眠だけでなく、
ダイエットにもつながります。
「地中海ダイエット」を意識する
「地中海ダイエット」はギリシャのクレタ島の
伝統的な食事法。
アルツハイマー型認知症のリスクを
軽減する食事法としても有力視されています。
「穀類や豆類、野菜、魚をよく摂り、
カロリーや動物性脂肪の摂取量は控えめ。
伝統的な和食とほぼ同じバランスです」。
日本人は、
不足しがちな乳製品を少し多めに
摂るとよいそうです。
自律神経は、
生命活動を維持するために自分の意思とは
無関係に絶えず働いています。
「心身の活動性を高める『交感神経』と、
休養のための『副交感神経』の
2つが働いていますが、
女性は40代からそのバランスが崩れ始め、
睡眠にも影響を与えます」。
自律神経は腸と関係して働くため、
整えるには腸活が有効。
納豆やキムチ、ヨーグルトなどの
発酵食品、
きのこなどの食物繊維を摂りましょう。
「メラトニン」とは、
自然な眠りを促す作用を持つホルモンのこと。
「分泌を促すには、
アミノ酸の一種『トリプトファン』を含む
食べ物を摂取しましょう。
乳製品、肉類、大豆製品、すじこ、
バナナ、アボカドなどに多く含まれています」。
ビタミンB6を含む食品
(玄米、レバー、まぐろ赤身、かつお、鶏ささみ、
鶏むね肉、鮭など)と一緒に摂ると、
トリプトファンの合成が促進されます。
マグネシウムを摂って
セロトニンを作る
「セロトニン」は
〝幸せホルモン"とも呼ばれる脳の
神経伝達物質です。
「精神を安定させる働きを持つ他、
オレキシンと相互作用し、
朝に近づくと分泌されて交感神経を刺激し、
すっきりした目覚めを促します。
熟睡に不可欠な夜のメラトニンの
分泌にも関係しています」。
セロトニンはマグネシウムを含む
食品を摂ると生成されやすく、
ナッツ類や緑黄色野菜、豆類、海藻、
ごまなどがおすすめです。
GABA」で睡眠の質を高める
「『GABA』は、
心身をリラックスさせる副交感神経を高める
脳の神経伝達物質です。
GABAが増えるとオレキシンの
活性が抑制され、
質のよい睡眠へと導く作用が期待できます」。
GABAは野菜(トマト、ケール、パプリカなど)、
果物(メロン、ぶどう、バナナなど)、
乳酸菌発酵食品(漬物、ヨーグルトなど)、
米、雑穀、カカオなどから摂取できます。
積極的に取り入れましょう。
「テアニン」を含む緑茶を飲む
緑茶のうま味成分に含まれる
アミノ酸の一種「テアニン」にも、
実は睡眠の質を高める作用が。
「血液中を通って脳に運ばれると、
GABAや『グリシン』
(下記「深部体温」の欄参照)の増加を促し、
覚醒系の神経伝達物質の働きを抑え、
副交感神経を優位にします。
緑茶にはカフェインも含まれますが、
テアニンはその興奮抑制作用もあるため、
睡眠の質の向上に有効だと考えられています」
深部体温を下げる食べ物を摂る
人は眠りにつくとき、
深部体温を下げると深い眠りに入り、
脳と体をしっかり休息させられる
仕組みが備わっています。
「ぐっすり眠るためには、
体の深部体温をスムーズに
低下させることが大切です」。
深部体温を下げるのが、
アミノ酸の一種「グリシン」を含む食品。
イカやエビ、カニなどに含まれています。
また、
きゅうりやトマト、ゴーヤなどの夏野菜にも
体を冷やす作用があります。
不眠は肥満を招きます
睡眠不足の人は体重が増加するという
研究データがあります。
不眠になると〝空腹ホルモン〞
のグレリンが増え、
〝満腹ホルモン〞
のレプチンが抑制されます。
つまり食欲が増し、
肥満の引き金に。
また、
グレリンの増加とレプチンの減少は
どちらもオレキシンを活性化させるため、
覚醒度が増し、
さらなる不眠の悪循環を引き起こします。