2024/11/7

老後も「イキイキ意欲的な人」と 「同じことばかり繰り返す人」 決定的な脳の違い

 
 
 
 
 
 
 
 

老後も「イキイキ意欲的な人」と

「同じことばかり繰り返す人」

決定的な脳の違い

盛り上がる男女のシニアたち
 
 
 

認知症になりやすい人は、

脳の前頭葉の機能が衰え、

意欲が低下していることが多い。

 

意欲がなくなれば、自然と出歩くことは減り、

足腰の衰えも顕著に現れる。老後を若々しく、

活力に溢れた姿で生きぬくためにはどうすればいいのか。

 

精神科医の和田秀樹氏が、

すぐに始められる「前頭葉の鍛え方」を授ける。

 

 

認知症やアルツハイマー防止の


カギは男性ホルモンにあり

 
 

和田:クリエイティヴな仕事をなさっている脚本家や

小説家の方のなかには、

男性の場合は男性ホルモンの注射、

女性の場合は男性ホルモンの飲み薬を

ちょっと処方するだけで、

かなり頭が冴えるとおっしゃる方もおられます。

 
 
 
認知症やアルツハイマーも防げるということですか。
 
 

和田:男性ホルモンによって本当に頭が冴えているかどうか、

その因果関係はわからないのですが、

男性ホルモンが減ってくると

物忘れがひどくなるという報告はあります。

 

 

脳のなかにアセチルコリンという

神経伝達物質があり、

これが記憶や学習に関係しているのですが、

 

アルツハイマー型認知症の患者さんのなかには、

このアセチルコリンの減少がしばしば見られます。

 

 

実はこの脳内のアセチルコリンは

男性ホルモンのテストステロンと相関性が高く、

 

テストステロンが減ると

アセチルコリンも減少することがわかっています。

 

40代、50代の若年性アルツハイマー型認知症の人は、

1万人に10人もいると言われています。

 

そのくらいの年齢で物忘れが始まったと感じるのであれば、

いちど、

男性ホルモンの検査をしたほうがいいと思いますね。

 

 
 

99歳で大往生の瀬戸内寂聴は


死の間際まで肉を食べていた

 

和田:男性ホルモンに関連して言うと、

日本人は非常に良くない状況にあります。

 

たとえば、

アメリカ人は1日300グラムの肉を消費していますが、

日本人は1日あたり100グラム程度の消費量です。

そんなに食べていないのです。

 

男性ホルモンの材料はコレステロールで、

 

多くは肉に含まれますから、

それ自体、

日本人はあまり摂れていません。

 

そのせいかどうかはわかりませんが、

 

セックスレスの夫婦・パートナーも7割に

達するほどの世界有数のセックスレス大国です。

 
 
 
私は、わりと日本人全般、
 
男性ホルモンが少ないのではないかと思うのです。
 

中尾:なるほど。長寿の人は多いけれども、

それはただ単に長生きしているというだけで、

健康な人、

元気な人は少ないということですね。

 

和田:とくに男性はそうですよね。

女性は閉経後に男性ホルモンが自然と増えますから、

むしろ意欲的になる。

 

だから長寿の人でも女性のほうが

元気な場合が多いと思います。

 

 

 

あとは、

年を取ってもしっかりお肉が食べられる人。

 

お肉を食べている人には意欲的な人が多い。

 

99歳で亡くなった作家の瀬戸内寂聴さんも

晩年までステーキを食べたりしていたそうですが、

やはりお肉をしっかり食べて、

意欲的な女性の典型と言うべきでしょうか。

 

 

中尾:そうですね。

 

和田:50代以上の女性をターゲットにした

『ハルメク』というファッションを主とした

月刊情報誌がありますが、

 

あらゆる年代向けの女性誌のなかでも

発行部数は最も多く、

人気だそうですね。

 

『週刊文春』よりも売れているらしい。

 

ですから、

女性というのは年齢を重ねてもファッションに

興味があるし、

人とのコミュニケーションにも積極的で、

意欲的だということです。

 

 

意欲が湧かなくなってくる

 
 

和田:2024年は作家の佐藤愛子さんの

作品を映画化した『九十歳。何がめでたい』

が公開となりましたが、

 

その主演を務めている草笛光子さんにしても、

中尾さんにしても、

みんなからの憧れの的なわけですよね。

 

年を重ねてもこんなふうにかっこいい、

美しい女性でいたいとみんな思うわけです。

 

 

 女性にはそうやって年を重ねても

意欲的な人がいっぱいいる。

 

それだけ自分の人生のお手本がいる。けれども、

 

男性となるとなかなか見本にして

生きようと思える人は

少ないのではないかなと思います。

 

 

 
 
 

年を取ると、

見た目の若さ・美しさが衰えていく一方で、

おしゃべりな人間、話のうまい人間のほうが

モテるような気がします。

 

それは男性だけでなく、

女性もそうなのではないかと思うのですが。

 

 

中尾:ええ、そうですね。

 

和田:見た目もさることながら、

話の内容が面白いとか、

伊達に年を取ってないなと思わせられるかどうかで、

年を取ってからの魅力というのも違いますよね。

 

そうした話の内容の面白さについては、

脳のなかの前頭葉といわれる部分の

働きが大きく関与しているといわれています。

 

 

 つまり、

物知りな人というのは側頭葉が発達していると考えられます。

 

ですから言語機能が非常に高い。

 

また、計算が速い人は頭頂葉が発達しています。

 

 
 
クリエイティヴな能力を司る部分です。
 
 
意外性への対応能力、
 
応答可能性のようなものもこの前頭葉が
 
大きな役割を果たしています。
 
 
 
ですから、前頭葉の働きが悪くなると、
 
前例を踏襲する思考パターンになりがちですし、
 
新しい冒険もしなくなります。
 
 
クリエイティヴなことを思いつかないのです。
 
いわば、
 
前頭葉が意欲を司ると言ってもいいでしょう。

 

 

 

ここが大事なポイントなのですが、

残念なことに、

この前頭葉は脳のなかでも加齢とともに

最も先に萎縮が進む場所なんですよ。

 

 

 結局、前頭葉の機能が低下してくると、

 

意欲が落ちてくる。その結果、

 

足腰も使わなければ頭も使わない。

 

身体は衰えて、ヨボヨボになるし、

認知症にもなりやすくなる。

 

 

「いつも」のルーティンから離れた


想定外な行動をあえて起こしてみる

 
 

中尾:前頭葉には鍛え方などあるのでしょうか。

 

和田:前頭葉を鍛えるには、

なるべく想定外なことをわざと自分に起こすんですね。

 

前頭葉が衰えると想定外なことを避ける傾向にあります。

 

行きつけの店しか行かなくなるとか、

同じ著者の本しか読まなくなるとか。

 

服装ひとつとっても、

自分が黒が似合うと思ったら黒しか着なくなってしまう、

とか。とかく冒険することを避けるようになってしまう。

 

 
 
同じ人としか会わずに、
 
新しい出会いを求めなくなる。
 
 

和田:おっしゃるとおりです。

 

あるいは人と話していても意見が

違うといやだという気持ちになってしまう。

 

 

和田:新しい意見や異なる意見を取り入れる

キャパシティがなくなるのです。

 

反対に前頭葉が発達している人は

意見が違う人と上手に付き合ったり、

あるいは上手に喧嘩や言い合いが

できたりするわけですね。

 

 

中尾:なるほど。

 

和田:ですから、前頭葉を鍛えるには、

普段、前頭葉を使わないような生活から

少しずらしてみることが重要です。

 

行きつけの店にしか行かないとか、

同じファッションしかしない、

同じ著者の本しか読まないというような

「いつも」のことから、あえて外れてみる。

 

そうやって意外なこと、

想定外なことをしてみると、

前頭葉が次第に活性化されて

いくのではないかなと思います。

 
 
 

「もっと他人とぶつかったほうがいい」

 
 

中尾:日々、新しいことをしていると、

前頭葉が鍛えられるということですね。

 

 

和田:そうだと思います。

 

しかし、日本人の場合、若いのに全然、

 

前頭葉を使っていない人が多いなと思うのです。

 

コンフリクト(対立や衝突)を嫌って、

上の言いなりになったり。

 

あるいはテレビやネットの

情報をそのまま受け取ったり。

 

 

中尾:最近、とくにそう思います。

みんな、

面倒を避けているような印象を受けます。

 

和田:そうですね。どうも日本人は昔に比べて、

相対的に喧嘩をしなくなってきたような気もします。

 

中尾さんの世代よりももっと上だと思いますが、

作家の野坂昭如さんと

映画監督の大島渚さんの

大喧嘩の映像がとても記憶に残っていますけども、

 

侃侃諤諤と意見を主張し合って、

みんな闘っていたように思いますね。

 

そのなかから濃厚な人間の

コミュニケーションがあったようにも思います。

 

 

 
書影『60代から女は好き勝手くらいがちょうどいい』(宝島社)

中尾ミエ・和田秀樹 著
 
 
 
 

中尾:そうですね。そんな時代に比べて、

今は世の中全体で物をはっきりと言わなく

なっている風潮があります。

 

言えることの範囲を自分で狭めてしまっているので、

 

やることなすこと縮小してしまっているように思います。

 

 

 
本当に悪いと思うのです。
 
 
余計なことを言ったら嫌われてしまう。
 
 
それで新しいことにチャレンジ
 
したりするのに躊躇するならば、
 
 
それは前頭葉にいちばん悪いですね。
 
 
男性ホルモンにとっても悪いと思います。
 
 

言いたいことをはっきり言う。

 

やりたいことをやる。

 

新しいことにチャレンジしてみる。

 

それをしないと前頭葉がダメになってしまう。