
地球の歴史は生命の進化と絶滅の繰り返しだ。
地球上の生物は、
過去に5回の大規模な大量絶滅を経験しており、
「ビッグファイブ」と呼ばれている。
絶滅の憂き目にあったのは恐竜だけではない。
45億年以上にわたり、火山、小惑星、
気候変動により、
何百万もの種が絶滅した。
更に現在、地球には人類の活動による
「6度目の大量絶滅」が
進行している可能性があるという。
かつて地球が経験した5回の
大量絶滅は何が原因で
起きたのかを振り返っていこう。
もしかしたら何か学べることがあるかもしれない。
1回目:
オルドビス紀末
約4億4400万年前
約4億4000万年前、
地球最初の大量絶滅が発生した。
当時、
生物の多様性は約3000万年にわたって
増え続けていたが、
南極付近に巨大な氷床が形成され、
気候が急激に下がったことで止まった。
この寒冷化はアパラチア山脈の
形成と関係があるとされる。
当時存在した超大陸ゴンドワナ大陸が
北アメリカ大陸に衝突し、
約10億年前から約5億年前、
南半球に形成されたと考えられている
イアペトゥス海が1億5000万年かけて消滅した。
この衝突によって生じた岩石が風化する際、
大気中の二酸化炭素を吸収したため、
急激な寒冷化と海面低下が起き、
腕足動物(2枚の殻を持つ海産の底生無脊椎動物)、
サンゴ、三葉虫など海洋生物の約85%が絶滅した。

2回目:
デボン紀後期
約3億7200万年前
約4億1900万年前から約3億6500万年前に
かけてのデボン紀に、
地球は再び絶滅の危機に直面する。
この期間に断続的に起こった絶滅によって、
特に熱帯地域の海洋生物の75%が消えた。
原因は酸素濃度の低下に加え、
堆積物の増加、急速な気候変動、
隕石や彗星の衝突、火山活動、
大陸からの栄養塩類の流入など
複数の要因が絡み合った可能性が高い。
この時期、
シーラカンスのような一部の魚類は生き延びた。
また、陸上の植物が茎を強化するリグニン
(植物の細胞壁に含まれる高分子化合物)や
維管束を進化させ、
根が深く伸びたことで岩石の風化が進み、
これが絶滅の要因の一つになったという説もある。

3回目:
ペルム紀末
約2億5200万年前
約2億5200万年前、
「グレート・ダイイング(Great Dying)」と
呼ばれる史上最大の絶滅事件が起こった。
激しい火山活動が地球の気候を
劇的に変化させ、
生物圏全体が崩壊したのだ。
約6万年という短期間に、
海洋生物の96%、
陸上生物の約75%が消滅した。
アメリカの古生物学者クリスチャン・カメラー博士は
2023年のインタビューで、
「ペルム紀の大絶滅と
現在の気候変動は似ている。
どちらも温室効果ガスによる急速な
温暖化が原因だ。
当時は火山活動、
現在は人間活動が主な要因である」と述べている。
この絶滅期を生き延びたのは、
淡水域で大型肉食動物の手が届かない
小動物を食べていた原始的な両生類、
分椎目(ぶんついもく)などである。

4回目:
三畳紀末
約2億100万年前
「グレート・ダイイング」後、
生物は多様化を始めたが、
約2億100万年前に再び悲劇が起きる。
火山活動が再発し、
大気中の二酸化炭素濃度が上昇、
海洋が酸性化し、
地球の平均気温が約3~6℃も上昇した。
その結果、
陸上・海洋生物の約80%が絶滅した。
当時、
現在より大型で多様だったワニの
大半が絶滅したが、
これにより恐竜が繁栄する道が開かれた。

5回目:
白亜紀末
約6600万年前
約6600万年前、
現在のメキシコ・ユカタン半島沖に
直径約11kmの巨大隕石が衝突した。
この衝撃で120kmの巨大クレーターが形成され、
大津波や大量の塵・硫黄が大気圏に巻き上げられた。
世界規模の寒冷化と広範囲の山火事が発生し、
恐竜を含む全生物種の約75%が
絶滅したといわれている。
この大量絶滅で恐竜が姿を消した後、
小型の哺乳類が台頭し、
現在の生態系を形成した。

第6回目は既に進行している?
これらの歴史を振り返ると、
地球の生命は何度も滅亡の危機を
乗り越えてきたことがわかる。
そして現在、
科学者たちは「第6の絶滅」がすでに進行中であり、
原因は人間の活動だ、との見解を出している。
私たち人類が次の絶滅を食い止められるかどうか、
その選択は今、
私たちの手に委ねられている。
なお、
東京・上野の国立科学博物館では、
2025年11月1日から2026年2月23日間で、
「大絶滅展―生命史のビッグファイブ」の特別展を行う。
「ビッグファイブ」をテーマとする特別展は、
国立科学博物館では初めての開催となり、
各種の古生物や火山、
古気候・古海洋などを専門とする
国立科学博物館の研究者10名による監修で、
様々な角度から5回の大量絶滅の
謎に迫る興味深い内容となっている。
興味のある人は、
カレンダーやリマインダーにチェックを
入れておこう。

<参考:>