2026/9/25

宇宙人から 「あなたは何で できていますか」と 聞かれたら、 答えるべき「ひとつの元素」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

宇宙人から

「あなたは何で

できていますか」と

聞かれたら、

答えるべき「ひとつの元素」

 
 
 
 

高水 裕一


 

もし未知の異星人から

「あなたはどこから来ましたか?」と

問われたら、どう答えますか?

 

 

「地球から」という回答は、

宇宙規模の社交場では失笑を

買ってしまうかもしれません。

 

実は私たち地球人は、

ある決定的な理由により、

宇宙の平均レベルよりも科学の発達が

遅れている可能性があるのです。

 

 

 

 

ファーストコンタクトの日に恥を

かかないために必要なのは、

地球の狭い常識ではなく、

 

宇宙のどこへ行っても通用する

「普遍的な教養」と「宇宙的思考法」です。

 

 

多種多様な異星人が行き交う

宇宙ステーションで繰り広げられる、

 

知的で刺激的な問いの数々。

 

宇宙で真に求められる「本当の科学知識」とは

一体どのようなものなのか、

その知的な冒険の一端をぜひ覗いてみてください。

 

 

<あわせて読みたい 漫画『宇宙人と出会う前に読む本』>

 

 

「アナタは『何』でできていますか?」


宇宙人からの思いがけない問い。

 

この問いに答えられなければ、

待つのは破滅か絶望か――。

地球の当たり前が崩壊する、

人類絶滅サスペンス!

 

 

 

 

お別れの前に

 

では、そろそろ冒頭の質問に戻りましょう。

 

あなたは何でできているかを、

彼が期待しているとおりに元素で

答えるにはどう言えばよいでしょうか。

 

地球に住んでいるヒトの場合は、

酸素、炭素、水素、窒素の4つを答えられれば

十分でしょう。

 

ブルーバックスの愛読者であれば、

そんなに難しくはないはずです。

 

 

しかし、ここであなたはまごついてしまいます。

 

当然その4つも浮かんではいたのですが、

血液をつくる鉄も多そうだよなとか、

リンも大事だって何かに書いてあったなとか、

よけいなことが頭を駆けめぐって、

声が出てきません。

 

恥をかきたくないと思うと、

こうなりますよね。

 

そんなあなたを微笑みながら見ていた彼は、

やおらテーブルの上の紙ナプキンを

1枚抜き取って、

 

ペンを手にしてなにやら描きはじめました。

 

見ているとそれは、

2つの円でできた同心円と、

3つの円でできた同心円。

 

そのあと彼は、

それぞれの円の規則的な位置に

黒丸を打っていきました。

 

どうやら電子配置図のようです。

 

彼はペンを置くと、

あなたの顔を見ながら2つの図を

交互に指さし、こう尋ねてきました。

 

「どちらですか?」

 

「ちょっと待って」。

ついあなたは日本語を口走りながら、

黒丸で示された電子の位置を

電子配置図と見比べて、

 

どの元素のものかを確認します。

 

一つは炭素の、

もう一つはケイ素の電子配置図で

あることがわかりました。

 

いま、あなたはようやく、

彼の質問の意図を理解できた気がしました。

 

炭素とケイ素は、

周期表では縦の同じラインにあり、

そういう元素どうしは前にお話ししたように

化学的性質が似ています。

 

そしてあなたは以前に何かの科学記事で、

炭素とケイ素は置き換えが可能で、

 

宇宙のどこかには、

地球生物が身体をつくるのに

炭素を使っているように、

 

ケイ素を使っている生物がいるかもしれないと

書かれていたのを思い出したのです。

 

 

おそらく彼は、

私が炭素系か、ケイ素系かを知りたくて、

何でできているのかと尋ねてきたのだろう―

そう考えたあなたは炭素の電子配置図の

ほうを指さしました。

 

彼はにこっと笑って言いました。

 

「私もそうです」

 

そのあと彼は残念そうに、

そろそろ仕事のために持ち場に

戻らなくてはならないと伝えてきました。

 

あなたもとても残念でしたが、

しかたがありません。

 

表情や動作などすべてを使って、

心からの感謝の意を彼に伝えました。

 

すると、

彼は紙ナプキンをもう2枚、抜き取って、

1枚をあなたに差し出してから、

ゆっくりとこのようなことを言ってきたのです。

 

 

「きょうは私たちは、

翻訳機を通してのやりとりしかできませんでした。

 

しかし、やがてはお互いの惑星の言葉を覚え、

文字を覚えるときがくるかもしれません。

 

そのときの楽しみのために、

あなたが、あなたの惑星で最も大切だと

思う言葉を書いてください」

 

 

そして、

自分も周期表を取り出すと、

それぞれの元素の横になにやら書きつけて、

 

「これは数」「これは文字」などと

説明してくれたあと、

紙ナプキンにまた同心円を描きはじめました。

 

どうやら彼の惑星では実際に

電子配置図が共通言語として

使われているようです。

 

 

彼の説明を聞いて方法を呑み込んだあなたも、

まず地球で最もポピュラーな言語である

英語のアルファベットをすべて書き出して、

 

それぞれの文字に1から26までの

番号を割り振りました。

 

そして、何を書いたらよいか、

しばし考えました。

 

考えているうちに自然と、

きょうのここまでのことが思い出されてきました。

 

地球では一時期までは、

地球外で知的生命と遭遇するのは

不可能だろうと考えられていました。

 

地球人は宇宙で孤独だと思われていたのです。

 

それが嘘のように、

いま自分には宇宙人の友だちができた。

 

そして心やさしい彼のおかげで、

立体星座カタログと星のスペクトル分類図と

元素の電子配置図があれば

(宇宙版「三種の神器」かも?)意思疎通が

できることを教えられて、

こんなにも幸せな時間を過ごすことができている―。

 

 

そう考えると、

思い浮かんだ言葉がありました。

 

あなたは辞書を引くように周期表を参照しながら、

その文字がどの元素に対応するかを調べ、

 

その元素の電子配置を同心円に

黒丸で打っていきました。

 

そのようにして、

あなたが文字のかわりに電子配置図を

書いた元素は、

順に次のとおりでした。

 

 

マグネシウム(Mg)、リン(P)、チタン(Ti)、ホウ素(B)

 

あなたは書き終えると、

彼から紙ナプキンを受け取り、

自分が書いたものを彼に手渡しました。

 

もしもいつか本当に彼に解読される日がきたら、

ちょっと恥ずかしいな、と思いながら。

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

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