地球の生命をあやつっているのは、
「ウイルス」だった……!?
生命観が書き換えられる衝撃の事実!
宿主の細胞に寄生することで自らを複製し、
地球上で最も数が多い
生物学的実体である「ウイルス」。
なんと、
海や池の水バケツ一杯分に、
世界人口を超えるウイルスが
満ちていると知ったら、
驚くでしょうか。
近年、
生物の進化から環境変動まで、
ウイルスが地球生態系を司る
重要な機能をもつことが明らかになってきました。
ウイルス生態学の第一人者が、
壮大なスケールで地球生命の根源に迫る
『世界はウイルスでできている
地球生命の「支配者」』
(講談社ブルーバックス)は、
そのようなウイルスの驚きの
実態や役割を解説する一冊です。

地球上のあらゆる生物圏に
存在する生物学的実体
ノーベル賞受賞者である英国の生物学者
ピーター・メダワー(1915~1987)は、
ウイルスを「タンパク質に包まれた悪い知らせ」と呼んだ。
つい最近も私たちは、
たったひとつのウイルス“SARS-COV-2”が
出現したことで未曽有の経験をし、
世界中で多くの人命が失われ、
生活にも大きな影響を受けた。
コロナ禍のはるか以前より、
ウイルスは人に病気を
もたらすものとして恐れられてきた。

望むと望まざるとにかかわらず、
ウイルスとの出会いはあらゆるところで起こる。
なぜなら、
ウイルスは地球上のあらゆる生物圏に存在する、
最も数の多い生物学的実体だからだ。
実際、
どれぐらい多いのか。
私が研究対象とする海や湖沼(こしょう)で、
小さなバケツにその水を汲み、
その中のウイルス粒子の数を数えたら
(全部を数えるのはえらく大変だが)、
世界の総人口を超える数になるだろう。
海にいるすべてのウイルスを集めて、
総生物量(バイオマス)に換算してみると、
全人類の5倍程度にもなる。
このように、
膨大な数のウイルス粒子が至るところに
漂っているのだから、
どうにも避けようがない。
まだ決着がついていない議論
ところで、
先ほど私は、
ウイルスが「生物学的実体」だと述べた。
そのようにあいまいな言い方をしたのは、
ウイルスが生物なのか物質なのかという
議論にまだ決着がついていないからだ。
ウイルス粒子そのものは、
呼吸もせず、
何かを作り出したりすることもせず、
生物学的には不活性の粒子である。
宿主(しゅくしゅ)となる細胞に取りついて、
その中に侵入することで、
初めて自らを複製できる。
言うなれば、
「子孫を作り出すことができる
完全寄生性の粒子」なのだ。