<参考:橋本 省二>
高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所 教授
1喧嘩はするな、
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3過去をくよくよするな、
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2025/10/6
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地球は、目には見えない 「すべすべの物質」の 中を泳いでいる?! 物理学者が長い間存在を信じていた、 光を伝える「謎の物質」 |
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音よりも速く、光より速く?「よし、気象観測」。 雷が聞こえると家族にそう言い残して2階に上がり、 窓にへばりついて外をじっと見る。
関東平野は広い。
遠くまで見渡すことができるので、 雷の観測にぴったりだ。
稲妻が見えたらすぐに 秒数を数えるのが基本だろう。
1、2、3、……。ゴロゴロゴロと聞こえたら、 光速と音速の違いによる時間差がわかり、 雷までの距離がわかる。
思い出すだけでもわくわくするが、 家族はなぜかテレビに夢中だ。
何ともったいないことか。
光速の話をする前に、 まずは音速について考えてみよう。
空気中を伝わる音の速さは有限だ。
なぜだろうか。 音が空気中をどうやって 伝わっているかを考えるとわかる。
空気を原子・分子のレベルまで見ていくと、 窒素や酸素の分子 (どちらも二つの原子がくっついているので N2やO2と書く)がめちゃくちゃに 飛び交ってぶつかり合っている。
個々の分子の動きを見ると まったくめちゃくちゃだが、
全体として見ると平均化されて おだやかな空気に見える。
雷鳴が伝わるときの空気も、 分子レベルで見ると個々の分子の動きはや はりめちゃくちゃだ。
だが、雷の発生源では分子がある方向に いっせいに押されて、 空気がそのまわりで少しだけ濃くなる。
濃くなった分子は周囲の分子にぶつかって 押しくらまんじゅうを始め、 その先の空気が濃くなる。
こうして伝わっていく空気の濃淡、 これが音だというわけだ。
そう考えると、 音に有限の速さがあることは理解できる。
空気中で飛び交う分子の速度は有限なので、 濃淡を隣に伝える速さはそれよりも 速くなることはない。
めちゃくちゃに飛び交う分子の平均的な 濃淡が動く速さは、 個々の分子の速度よりもずっと遅いはずだ。
では、 音よりも速く飛ぶことはできるだろうか?
音よりも速く飛ぶことは、可能なのか?それはできる。 実際、超音速のジェット機というものがあって、 現代の戦闘機はみな音速よりも速く飛ぶことができる。
音速を超えるということは、 飛行機の前方の空気をかき分けて、 つまり文字通り切り裂いて進むことになり、
後方に大きな衝撃波を残すことになるが、 とにかく空気の濃淡が進む速さというのは 別に越えられない壁ではないので、
十分に強力なジェットエンジンがあれば それよりも速く進むことは可能なのだ。
では、光はどうだろう。
光より速く飛ぶことは可能だろうか。 波には伝わるものがある光が波だというのは聞いたことがあるだろう。 晴れた冬の日、真昼でも傾いた太陽のせいで、 部屋には日差しが深く差し込む。
床には窓のサッシと物干し竿の影が映っているが、 よく見ると日が当たっているところと 影との境界は少しぼやけている。
窓から遠くなるほど境目がぼやける。
光がどこまでも直進するならもっとくっきりと 境目ができてもよさそうなものだが。
これは光が波であることの一つの証拠だ。
波には回折といって影になったところにも 回り込んでいく性質がある。
外洋の荒波から堤防で 守られている湾の内側でも、
入り口から入った波が湾全体に広がっていく (図「波には回折という性質がある」)。
これと同じことが窓から差し込む 日光でも起こっているわけだ。
波には伝わるものがあるはずだ。
何かが上がったり下がったりしながら伝わっていく。
海に立つ波は海面の高さ、 音の場合は空気の濃淡が波を伝える。
では光を伝えているものは何だろうか?
光が伝わるために、空間に存在する「何か」目には見えないこの物質のことを、 19世紀までの物理学者はエーテルと呼んだ。
地球は宇宙に満ち満ちたエーテルの中を 泳いでいるが、
エーテルは限りなくすべすべなので 通常の物質はエーテルの中を抵抗なく 通り抜けることができる。
ただ光だけは別だ。
光はエーテルをふるわせる振動だと考える。
特に証拠はないものの、 空間を光が伝わるためにそこに 「何か」が必要だとしたら、 その存在を仮定したくなる。
では、 エーテルの存在を確認するにはどうすればいいだろうか。
何しろ通常の物質はすり抜けてしまうわけだから 光を使うしかない。
エーテルがあることによって 光が受ける影響はどんなものか。
それを考えるにはエーテルの中を走ってみればよい。
エーテルの風を受けながら走ることになるが、 静止したエーテルを伝わる光の速さが一定だとすると、
その中を走っている人が見る光は 「向かい風」のときはより速く、
「追い風」のときはより遅く見えるに違いない (図「エーテルがあることを確認するには」)。
横向きの光はその中間となる。 地球は太陽のまわりを秒速およそ 30キロメートルの猛スピードで回っている。
光の速さは秒速30万キロメートルなので 1万分の1でしかないが、 それでも精密な実験をすれば区別できそうだ。
エーテルは、本当に存在するのか?有名なマイケルソン─モーレーの実験は そういうものだ(図「マイケルソン─モーレーの実験」)。
向きの違いによる光の速さの違いを測定する。
手法自体はそれほど難しいものではない。
一つの光源からの光を、 半分透過する鏡を使って二つに分け、
鏡に当てて戻ってきた光を再び 合流させたときの干渉縞を見ればよい。
地上に置いた実験装置は時刻とともに 地球の自転によって向きが変わるし、
季節が移れば地球の公転によって エーテルの中を進む方向も変化する。
十分に精密に作られた装置なら、 実験装置が向きを変えるにつれて 干渉縞が少しずつ動いていくのが見えるだろう。
もちろん、
そこにエーテルの風が吹いているとするなら。
19世紀末に行われたこの実験の結果は、 エーテルの存在を否定するものだった。
干渉縞が予期されたように動く様子はなく、 光の速さはどちらを向いても、 季節にもよらず同じだということがわかったのだ。
物理学者が長い間その存在を仮定してきた、 空間をあまねく満たすエーテル。
その実在は否定された。
これはいったいどうしたことだろうか。
確かに地球の公転速度は 光速の1万分の1ほどでしかない。
それでもとにかく走っているのだ。
にもかかわらず予想される光の速さの変化は (測定精度の範囲内で)ゼロだというのだ。
これでは光より速く走るもなにも、 どんなにがんばって走っても一向に 追いつけないではないか。
一から考え直してみる必要がありそうだ。
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