転ばない身体を作るために
絶対にやっておきたい
トレーニング
できない人は、寝たきりになる
転ばない身体を作るために、
まずなによりも大切なのが筋肉だ。
日頃から、
できる範囲でトレーニングするのが望ましいが、
特に効率的なのがスクワットだ。
スクワットは、
下半身・体幹・代謝・姿勢・健康寿命の
すべてを一度に伸ばせる、
最もコスパのいい運動。
トレーナーのなかには、
「スクワット最強説」を唱える人も多い。
北里大学大学院医療系研究科
医学専攻主任教授の高平尚伸氏が解説する。
「転倒を防ぐという観点で大切なのは、
複合的に筋肉を鍛えるということです。
その代表がスクワットです」

スクワットをすれば、
太ももの前側にある大腿四頭筋、
太ももの裏側にあるハムストリングス、
お尻の筋肉の大殿筋、
ふくらはぎの下腿三頭筋などを
一度に鍛えることができる。高平氏が続ける。
「これらの筋肉は、
下半身を動かす際に大切な筋肉なので、
転倒を防ぐことができる。
逆に、スクワットができないようだと、
寝たきりのリスクがあるとも言われています」
ただし、
闇雲にスクワットをするのはかえって危険だ。
間違ったフォームでトレーニングすると
ケガにつながりかねない。
ポイントは、ひざを前に出さないことだ。
「苦しいとは思いますが、
ひざをつま先よりも前に出さないようにしてください。
ひざが前に出ると、
ひざに負担がかかって痛めてしまう。
また、スクワットをした際に、
お尻がしっかりと後ろに下がるといいでしょう。
イスに腰掛けるようなイメージです」
「ランジ」も良し
スクワットのほかに、
「ランジ」にも挑戦してみよう。手順は次のとおりだ。
①足を肩幅に開いて立つ
②片足を大きく前に出す
③両ひざを曲げて腰を落とす(後ろのひざは床すれすれ)
④前足で地面を押して立ち上がる
⑤反対の足も同じく繰り返す

散歩の前に片足10回ずつ繰り返すだけでも
筋力アップにつながる。
高平氏が続ける。
「腰を落とした際に、
できれば10~20秒維持してみてください。
この姿勢によって、
縮こまっていた股関節がほぐされ、
可動域も広がり、転びにくくなります」
2人に1人はたんぱく質不足
トレーニングと同時に栄養もきちんと摂取したい。
なかでも、
炭水化物、脂質とともに、
三大栄養素の一つであるたんぱく質が大切だ。
たんぱく質は、
水分を除けば人体の約4割を占めていて、
身体の組織を作る材料になる重要な栄養素である。
それにもかかわらず、
高齢者の2人に1人は、たんぱく質が
不足していると言われている。
たんぱく質をしっかり摂ることで、
転倒を防ぐこともできるはずだ。

ではいったい、
一日にどれくらい摂取すればいいのか。
東北大学名誉教授の上月正博氏が解説する。
「65歳以上の場合は、
『標準体重1kgあたり1~1.25g』が
一つの目安と言われています。
標準体重(kg)とは、
『身長(m)×身長(m)×22』で求められる
理想的な体重のこと。
つまり身長170cmの人
は標準体重が約64kgなので、
一日にたんぱく質を64~80g
摂ればいいということになります」
たとえば鶏むね肉100gには、
たんぱく質が24gほど、焼き鮭には29g、
卵には12g、納豆には16gが含まれている。
こうした食材を積極的に食べることで、
強い身体を作れるはずだ。
バランスよく摂取
「ただし、一度の食事で
大量のたんぱく質を摂取しても、
吸収できずに体の外へ排出されてしまいます。
実は、
人間が一度の食事で吸収できるたんぱく質は、
約30gが上限。
だから三食に分けて、
バランスよく摂るのが重要です。
なかでも特に大事なのは朝食でしょう。
朝食を簡単に済ませてしまう人は少なくないですが、
ここでたんぱく質を摂取しておかないと、
いきなり体内でたんぱく質が不足して、
午前中に筋肉がどんどん分解されてしまいます」

転ばない身体は、
一日で作れるものではない。
毎日の小さな積み重ねが、
未来の自分を守ってくれるのだ。