2025/12/8

何のために生き、 何のために働くのか イチローが28年間、 毎日同じカレーを 食べ続けた理由

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

何のために生き、

何のために働くのか

イチローが28年間、

毎日同じカレーを

食べ続けた理由

 
 
 
 
 
 

イチロー 生き方 働き方

 

2019年3月、

東京ドームで引退会見に臨んだイチローは、

深夜まで続いた質疑応答の中で、こう語った。

 

 

「人より頑張ることなんてとてもできない。

あくまで測りは自分の中にある」

 

28年間のプロ野球人生で積み重ねた4367本のヒット。

 

その裏にあったのは、結果ではなく、

日々の小さな積み重ねを信じ続けた男の哲学だった。

 

 

オリックス時代の屈辱が教えた

「ゼロ地点」の思想

 
 

1994年、21歳のイチローは、

プロ4年目にしてようやく一軍で開花した。

 

しかし、その前年まで彼は二軍暮らしを強いられ、

周囲からは「振り子打法という

変則フォームでは通用しない」と酷評されていた。

 

当時の首脳陣は彼の打法を矯正しようとし、

イチロー自身も自分のやり方が本当に正しいのか、

何度も自問自答を繰り返していた。

 

 

そんな彼を救ったのが、当時の仰木彬監督だった。

 

仰木監督は「お前のやりたいようにやれ」と、

イチローの個性を認めた。

 

そこからイチローは、

他人の評価や常識に惑わされることをやめた。

 

毎朝同じ時間に起き、同じカレーを食べ、

同じルーティンで球場に向かう。

 

その徹底した日常の繰り返しの中で、

彼は「自分の測り」を確立していった。

 

 

結果は後からついてくる。

 

イチローが追い求めたのは、

毎日の準備を完璧にすることだった。

 

「準備というのは、

言い訳の材料となり得るものを排除していく、

そのために考え得るすべてのことをこなしていく」。

 

彼にとって野球は、結果を競うゲームではなく、

自分自身との対話だった。

 

 

メジャーという荒野で見つけた

「孤独の価値」

 
 

2001年、27歳でメジャーリーグに挑戦した

イチローを待っていたのは、

 

想像を絶する孤独だった。

 

言葉の壁、文化の違い、

そして「日本人の細身の選手が

通用するわけがない」という偏見。

 

開幕前、

アメリカのメディアは彼を嘲笑した。

 

しかしイチローは、

その孤独を恐れなかった。むしろ、

孤独の中でこそ自分と向き合えると考えた。

 

毎日、誰よりも早く球場に来て、

誰よりも遅く帰る。

 

チームメイトとの交流を最小限にし、

自分のルーティンを守り続けた。

 

周囲から「孤高の人」と呼ばれても、

彼は揺るがなかった。

 

 

「人に認められることでしか自分の

価値を見いだせないなら、

それは本当の自信ではない」

 

 

イチローが大切にしたのは、

他者からの評価ではなく、

自分が自分に課した基準をクリアし続けることだった。

 

初年度に首位打者とMVPを獲得しても、

彼の日常は何も変わらなかった。なぜなら、

 

彼にとっての「ゴール」は、

結果ではなく、

完璧な準備を積み重ね続けることだったからだ。

 

 

「小さなことを積み重ねることが、

とんでもないところへ行く唯一の道」

 
 

引退会見で、イチローはこう語った。

 

「小さなことを積み重ねることが、

とんでもないところへ行く唯一の道だと感じている」

 

 

この言葉は、

現代社会を生きる私たちへの

痛烈なメッセージでもある。

 

 

今、多くの人が「成果」や

「効率」を追い求めている。

短期間で結果を出すことが求められ、

 

プロセスは軽視される。

SNSでは他人の成功だけが切り取られて表示され、

地道な努力は見えない。

 

そんな社会の中で、

私たちは「すぐに結果が出ないものには

価値がない」という幻想に囚われてしまっている。

 

 

しかしイチローは、28年間同じことを繰り返し続けた。

 

毎日のストレッチ、

バットの手入れ、食事の管理。

 

誰も見ていないところでの小さな積み重ねこそが、

彼を「とんでもないところ」へ連れて行った。

 

そこには近道はなく、

他人と比較する必要もない。

 

ただ、自分の中の測りに従って、

今日できることを精一杯やる。

 

それだけだった。

 

「夢や目標を達成するには、

一歩一歩、小さなことを積み重ねるしかない。

 

急がず、でも休まず」

 

イチローが遺したこの言葉は、

結果至上主義に疲弊した現代人への処方箋である。

 

私たちは「何のために働くのか」と問う前に、

「今日、自分は何を積み重ねるのか」を

問うべきなのかもしれない。

 

 

人生の測りは、

自分の中にしかない

 
 

イチローは引退後のインタビューで、

こう語っている。

 

「野球を続けてこられたのは、

野球が好きだったからではなく、

野球を通じて自分と向き合うことが好きだったから」

 

 

彼にとって野球は手段であり、

本当の目的は「自分自身を知ること」だった。

 

 

現代社会は、

常に私たちに外部の基準を押し付けてくる。

 

年収、役職、フォロワー数、いいねの数。

 

しかし、それらの数字で測れるものは、

本当の豊かさではない。

 

イチローが28年間守り続けた「自分の測り」は、

経済的指標とは無縁のものだった。

 

 

何のために生き、

何のために働くのか。

 

その答えは、他人が決めるものでも、

社会が与えてくれるものでもない。

 

毎日の小さな積み重ねの中で、

自分自身と対話し続けることでしか見つからない。

 

イチローは、

結果ではなくプロセスに、

他者の評価ではなく自己との約束に、

すべてを捧げた。

 

 

「今、自分は本当に満ち足りているか?」。

この問いに正直に答えられるかどうか。

 

 

それこそが、

私たちが人生で本当に大切にすべきものを

見失わないための、

唯一の羅針盤なのかもしれない。