120年に一度咲くタケ、
7000歳のサンゴ、若返るクラゲ……。
地球上には、
様々な手段で自らの体を更新し続け、
悠久の時を生きる「不老長寿生物」たちが
数多く存在しています。
しかし、体が変わり続けるならば、
「私」の本体はどこにあり、
「死」はどう定義されるのでしょうか。
そして、
なぜヒトは同じように不老長寿と
なるようには進化しなかったのでしょうか?
こうした死と寿命を巡る謎を、
進化学の視点から解き明かしていくのが
『不老長寿の進化学 我々はなぜ「死」を選んだのか』
(講談社・ブルーバックス)です。
本記事シリーズでは、
この注目の新刊から興味深いトピックの
数々をご紹介していきます。
今回は、私たちの寿命に影響すると考えられる
「細胞分裂回数の上限」について見ていきます。
寿命と細胞分裂回数には、
どのような関係があるのでしょうか?
また、大人と子どもの細胞では、
分裂能力に違いがあるのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。

細胞の死と個体の死
ヒトの細胞が分裂できる回数には、
上限がある……。このことを発見したのが、
アメリカの生物学者、レオナード・ヘイフリックです。
彼の名前にちなんで、
細胞が分裂できる回数の限界は
「ヘイフリック限界」と呼ばれています。
この「ヘイフリック限界」のことを知ると、
勘のいい方は、
これが個体の寿命の原因になって
いるのではないかと予想するのではないでしょうか?
これまでの研究成果は、
おおむねその予想通りです。
そういった知見を2つ紹介しましょう。
まずは、
哺乳類の種間比較の研究です。
哺乳類は、
種によっておおよその寿命が決まっています。
ヒトなら最大で100歳程度、
ハツカネズミなら3.5年といった感じです。
こうした統計を集める一方で、
いろいろな動物の胎児から線維芽細胞を取り出して、
細胞の分裂能力を調べます(線維芽細胞は、
ヘイフリックがヒトの分裂限界を調べた時に使ったものです)。
こうして、
いろいろな哺乳類の細胞分裂の上限が決められていきました。
最後に、
個体の寿命と細胞分裂の上限の間に
関係があるか調べられたのです
(図「哺乳類の最大寿命と最大細胞分裂回数の関係」)。
