2026/2/18

形には、 必ず理由がある 人体は「偶然」 ではなく「必然」で できている

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

形には、

必ず理由がある

人体は「偶然」

ではなく「必然」でできている

 
 
 
 
 
 
解剖学で知る人体のかたちのサムネイル画像
 
解剖学で知る人体のかたち室生 暁
 
 
 

私たちの体にある形には、

必ず理由があります。

 

 

心臓のねじれ、

甲状腺動脈のS字カーブ、

尿管の曲がり、肺間膜のヒダ、

膝蓋骨の膨らみ。

 

 

一見すると「そういう形だから」と

片づけられてしまいそうですが、

 

解剖学を少し深く見ていくと、

どの形にも必ず意味が

隠れていることがわかります。

 

 

人体は、

適当にできた構造物ではありません。

 

 

その形は、

 

  • 機能
  • 発生
  • 進化
 

という三つの理由が重なり合うことで

決まっています。

 

 

この考え方は、動物行動学者

ニコ・ティンバーゲン が示した

 

「4つのWhy(なぜ)」という視点を、

解剖学に合わせて再構築したものでもあります。

 

 

形態の「なぜ」を解く三つの視点

 

1.機能――この形は、

何を成し遂げるためにあるのか?

 
 

もっとも直感的で、

理解しやすい視点です。

 

  • 心臓の二重らせん構造  →
  • 雑巾を絞るように血液を効率よく送り出すため
 
 
  • 膝蓋骨  →
  • 大腿四頭筋の力を効率よく伝え、
  • 膝を伸ばしやすくするため
 
 
  • 甲状腺動脈のS字走行  →
  • 首が動いても血管が無理に
  • 引き伸ばされないようにするため
 
 
 

ここには、

「形は機能に従う(form follows function)」

という原則がはっきりと表れています。

 

 

2.発生(+至近要因)――

 

どのように作られるのか? ――

 

その形を生み出す仕組みは何か?

 
 

私たちの体は、

成長の過程で“その場で

設計される”わけではありません。

 

発生の途中には、

どうしても避けられない制約があります。

 

 

  • 胎児期、心臓は右方向にねじれながら形成される  →
  • その動きが、成人の心筋のねじれ構造につながる
 
  • 血管は、周囲の臓器と一緒に移動する  →
  • その結果、反回神経が血管を巻き込むような走行になる
 
  • 腸は発生の途中で270度回転する  →
  • 胃の位置や腹腔内の非対称な構造が生まれる

 

 

発生学は、

人体の形を決める

「つくり方の理由」を教えてくれます。

 

 

さらにその背後には、

遺伝子の働き、細胞同士の合図、

細胞の移動といった至近要因があります。

 

これらはまとめて、

「発生の理由」と考えてよい領域です。

 

 

 

3.進化――なぜ、

その形が歴史的に選ばれてきたのか?

 
 

人体の形は、

長い進化の積み重ねでもあります。

 

  • 魚類の体をくねらせる運動  →
  • 哺乳類の心臓ねじれ構造のルーツ
 
  • 四足歩行から二足歩行へ  →
  • 膝関節が不安定になり、十字靭帯の重要性が増す
 
  • 爬虫類・鳥類・哺乳類を比べる  →
  • 血管の走り方や呼吸器の形の違いがはっきり見えてくる
 

 

 

進化の視点は、

「なぜ最終的にこの形に落ち着いたのか」を

説明してくれます。

 

 

三つが重なるところに、

「形態の必然」がある

 
 

人体の形は、

機能 × 発生 × 進化

 

 

という三重構造で決まっています。

 

どれか一つだけでは不十分で、

三つが重なったときに、

形はもっとも高い説得力を持ちます。

 

 

心臓のねじれ構造は、その代表例です。

 

  • 機能:雑巾しぼりのような運動で
  • 効率よく血液を送り出す
  • 発生:胎児期の心管の右ねじれに由来
 
 
  • 進化:魚類から哺乳類へと
  • 続くポンプ効率の最適化
 
 

このように、

形は単なる見た目ではありません。

 

機能・発生・進化が折り重なった結果なのです。

 

 

「解剖学は暗記ではない」

 

解剖学は、ともすれば

「名前を覚えるだけの科目」と思われがちです。

 

 

しかし本質は、そこにはありません。

 

  • なぜ、そこにあるのか
  • なぜ、その形なのか
  • なぜ、その方向へ走っているのか
 
 

これらを理解すると、

解剖学は 丸暗記の学問から

意味を読み解く学問へと変わります。

 

 

形の「なぜ」が見えてくると、

人体はただの構造物ではなく、

 

美しく合理的な生体デザインとして

立ち上がってきます。

 

 

人体は「理由の集合体」である

 
 

人体の形を理解することは、

「生命が、なぜこうあるのか」を

理解することです。

 

心臓のねじれも、

血管のカーブも、

骨の膨らみも、

すべては理由の積み

重ねによって生まれました。

 

 

形は、偶然ではありません。

 

そこには必ず、

合理性と歴史があります。

 

人体は、 理由によって形づくられた、

もっとも身近な知的デザインなのです。 

 

 

<参考: 堀田秀吾>