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2026/10/20
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「老化しない生物」で 思考実験をしてみたら、 なぜ私たちが老いるのかが 見えてきた… 進化が生み出す 「寿命」のしくみ |
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「老化しない生物」で思考実験をしてみたら、なぜ私たちが老いるのかが見えてきた…進化が生み出す「寿命」のしくみ120年に一度咲くタケ、 7000歳のサンゴ、若返るクラゲ。
地球上には、 様々な手段で自らの体を更新し続け、 悠久の時を生きる「不老長寿生物」たちが 数多く存在しています。
しかし、体が変わり続けるならば、 「私」の本体はどこにあり、 「死」はどう定義されるのでしょうか。
そして、 なぜヒトは同じように不老長寿と なるようには進化しなかったのでしょうか?
こうした死と寿命を巡る謎を、 進化学の視点から解き明かしていくのが (講談社・ブルーバックス)です。
本記事シリーズでは、 この注目の新刊から興味深い トピックの数々をご紹介していきます。
寿命の進化学寿命の進化について考察を進めたのは、 アメリカの進化学者、ジョージ・ウィリアムズと、 イギリスの生物学者、ピーター・メダワーでした。
メダワーは、免疫研究の功績で1960年に ノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
彼らは寿命や老化のない生物を仮定し、 思考実験の末、 この生物に寿命を進化させることに 成功したのです。
どういうことでしょうか?
思考実験の末、この生物に寿命を進化させることに成功した
この仮想的な生物は、 老化を知りません。
寿命で死ぬこともなければ、 年を取っても若い時と何ら変わらない 体力を維持しています。
永遠の若さを保ち、 いつまでも繁殖に参加します。
しかし、不死身ではありません。 捕食者に捕まるとか、 事故に巻き込まれるなどの理由で死を迎えます。
仮に、この死亡率を年率50%としましょう。 集団の半分が、 年齢に関係なく死亡するという状況です。
この集団では、1歳を迎えられるのは、 当たり前ですが最初にいた集団全体の半分です。
同じように、 2歳と3歳になれるのは、 それぞれ25%と12.5%です。6歳まで 生き延びられるのは、 わずか1.5%程度だけになります。 繁殖を始める」と仮定する
もっとも、 老いを知らないこの生物は、 その後、 いくら齢を重ねても繁殖能力が 衰えることはありません。
こうした集団の進化を考えると、 次の理由で永遠の若さが進化により 急速に失われるのです。
例えば、この集団で、 1歳での子を産む数が上昇するような 突然変異が現れたとします。
この突然変異の利益は、 集団の半数の個体が享受することができます。
このため、 この突然変異は急速に集団に広がることでしょう。 こうして若い個体の繁殖能力が強化されます。
自然選択では「取り除かれにくい」形質それでは次に、 不利な突然変異を考えますが、 今度はもう少し工夫します。
不利な突然変異が効果を示すのは、 個体が6歳に達した時にしましょう。
例えば、 6歳になると目が見えにくくなるとか、 耳が聞こえづらくなるという突然変異です。
つまり、老化です。
視力や聴力が落ちればその分、 事故に巻き込まれやすくなるでしょう。
捕食者にも捕まりやすくなるはずです。
先に検討した通り、 こうした不利な突然変異は自然選択により淘汰され、 それをもった個体の死と共に集団から取り除かれます。
しかし、 6歳になってから現れる不利な突然変異は、 自然選択により取り除かれにくく、 集団に残りがちになります。
理由は、 事故が原因で6歳の個体など、 集団にもうすでにほとんどいないからです (先ほど、全体の1.5%程度となることを確認しましたね)。
もちろん、 この1.5%のうち、 不利な突然変異をもつ個体は 自然選択で淘汰されるはずです。
しかし、 この少数の個体が取り除かれたとしても、 これだけ少数派になってしまうと、 この突然変異を集団から追い出す力にはなれないのです。
結果的に、 老化が集団に残ることになります。
この結果と、 先に説明したような 「1歳で産む子の数が増えるような突然変異は 集団に急速に広がる」ということを合わせて考えると、 「集団は若い間に子を多く産み、 年を取ると死を迎える方向に進化していく」 という結論となります。
進化学者は、 これこそが老化の正体だと考えています。
もう少しだけ、 補足説明を加えておきましょう。
同じ不利な突然変異が、 今度は1歳で現れるとしましょう。
この場合、 不利益を被るのは全体の50%の個体になります。
不利な突然変異をもつ個体は当然、 自然選択により淘汰されますが、 対象がこれだけの大多数ならば、 不利な突然変異を集団から効果的に 排除することができるのです。
このため、 年齢が低いうちは健やかに暮らす能力が、 進化により維持されるのです。
やはり、 こうした集団も若い間に子を多く産み、 健康を保つように進化すると同時に、 急速に年を取り、 死を迎えるようにも進化します。
以上の議論は、 ある形質が進化するかどうかが、 明確な基準で評価されていることを示しています。
そしてそれは、 集団の大多数が利益、 もしくは不利益の影響を受けるかどうかです。
自然選択の「有効性」実際に、メダワーが想定した生物集団で、 ある形質に働く自然選択がどれくらい集団に影響するか、
すなわち自然選択の有効性が、 年齢とともにどのように変化するかを 表しているのが下図「集団の利益と不利益」です。
まず上のグラフを見てください。
この集団は、年齢にかかわらず 年間50%の個体が死亡するため、 生存率は時間とともに指数関数的に減少します。
また、この生物は繁殖を開始する1歳以降は、 変わらず繁殖能力を維持します。
ですから、 1歳以上の任意の年齢の個体が 将来もつであろう子の数(個体あたりの繁殖能力)は、
1歳以降は一定となります (この図では、1歳の個体あたりの 繁殖能力に対する相対値となっています)。
ちなみに、 0歳時点での値が0.5なのは、 生まれた個体の半分しか繁殖年齢に達しないからです。
さて、自然選択は、 生涯の子の数が増えるように作用します。
つまり、 自然選択がどれくらい集団に対して 有効性があるかどうかは、 生涯の子の数にどれだけ 影響を及ぼすかによって決まります。
このため、 ある年齢での自然選択の有効性は、 その時点での生存率と、 個体あたりの繁殖能力の積で表されます。
図「集団の利益と不利益」の下段を見てください。
1歳までは、 下降する生存率と上昇する個体あたりの 繁殖能力が相殺するので、 自然選択の有効性は1となります。
しかし、 その後は、個体あたりの繁殖能力は一定であっても、 生存率が指数関数的に減少するため、 自然選択の有効性も指数関数的に減少してしまいます。
老化に関連する「不利な突然変異」は、進化により広がってしまうメダワーが指摘したのは、 まさにこの点でした。
そしてこの原理が働くため、 事故で個体数が減ってしまう場合、 こと高齢になってから現れる不利の突然変異に関しては、 うまく取り除けないのです。
メダワーのアイデアは、 老化に関する不利な突然変異は、 自然選択により淘汰しがたいことを説明しました。
後にウィリアムズは、 老化に関連する不利な突然変異が 進化により広がってしまうことを、 同様の方法で説明しています。
「拮抗的多面発現理論」と呼ばれる考え方ですが、 ここでは説明を省くことにします。
以上の思考実験から、 寿命の予想パターンも演繹できます。
年齢と関係しない死亡率の高い生物は、 そもそも長生きすること自体が珍しくなります。
こうした珍しい個体が有利となるような形質は選択されず、 反対に不利になるような形質は取り除けないため、 結局は寿命が短くなります。
反対に、 年齢に依存しない死亡率が低い生物の寿命は、 長くなるように進化するはずです。
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