2023/6/11

天然パーマは太陽熱から頭を守る

 

天然パーマ」は、

人類の進化を支えた立役者だったかもしれません。

私たち人間は他の霊長類とは違って、

頭部に集中的に毛髪を生やしている点でユニークです。

 

中でも人類発祥の地であるアフリカでは

、今日でも「クセの強い縮れ毛」

一般的な髪質となっています。

 

そこで米ペンシルベニア州立大学

(Penn State)の研究チームは、

頭髪の進化的な利点を明らかにすべく、

髪質ごとの熱防御性を調査。

 

その結果、

クセの強い縮れ毛は最も頭部を涼しく保ち、

水分の蒸発を抑える効果があると実証されました。

 

直立二足歩行により頭部への

太陽熱を受けやすくなった人類において、

クセ強の天然パーマは大きな味方になったと考えられます。

 

 

天然パーマは太陽熱から

頭を守るのに最も優れた髪質

 

研究主任で人類学者の

ニーナ・ヤブロンスキー(Nina Jablonski)氏は、

本研究のきっかけについてこう話しています。

 

「初期の人類は一年中、

太陽が頭上にある赤道直下のアフリカで進化してきました。

 

その環境下で直立二足歩行を

するようになった人類は、

頭部に一定レベルの強い太陽熱を受けるようになります。

 

そこで頭髪の進化が

人類の体温調節にどんな役割を果たしたか

を知りたいと考えました」

 

今回の実験では、

サーマルマネキン

人体の温熱特性と発汗作用を再現できるヒト型装置)と

髪のウィッグを使い、

さまざまな髪質が頭部への

太陽熱にどう反応するかを調べています。

 

 

 

4つの条件で熱ランプを頭部に照射

4つの条件で熱ランプを頭部に照射 

 

まず、

マネキンを人間の皮膚の平均的な表面温度に近い

35℃を一定に保つようプログラムし、

温度と湿度が管理された室内にセットしました。

 

次に、

スキンヘッド・ストレートヘア(直毛)・

緩やかなカールヘア・クセの強いカールヘア

4つの条件で、

マネキンの頭に熱ランプを当てて

太陽光線を模擬的に照射します。

 

 

4つの条件で熱ランプを頭部に照射 

チームは、

マネキンの体温を一定に保つために

必要な電力量をモニタリングすることで、

頭部や体の熱損失量を測定しました。

 

それから発汗を模倣するために

頭皮を濡らして、

水分の蒸発による熱損失量が

どう変わるかもシミュレーションしています。

 

その結果、

スキンヘッド以外のすべての頭髪で

頭皮への日射量の減少が見られましたが、

中でも「クセの強いカールヘア」が

太陽熱から頭部を最も保護し、

頭皮を涼しく保つ効果が高いことが示されました。

 

その次に効果が高かったのが

「緩やかなカールヘア」で、

次が「ストレートヘア」です。

 

さらに発汗シミュレーションにおいても、

クセの強いカールヘアは涼しさを保つために

汗をかく必要性を最小限に抑え、

過剰な水分の損失を防いでいます。

 

一方で、

ストレートヘアはカールヘアに比べて、

頭皮への日射量の流入が多いため、

涼しさを保つために発汗による蒸発量も増えていました。

 

 

実際のマネキン。左がクセ強のカールヘアで、右がストレートヘア
 
実際のマネキン。左がクセ強のカールヘアで、右がストレートヘア 
 

以上の結果から、

クセの強いカールヘアは頭部を

太陽熱から守る上で最も優れた髪質である

ことが証明されました。

 

その理由について研究者らは、

きつく巻かれた縮れ毛が髪をかさ増しすることで、

頭髪のトップから頭皮までの距離を広げ、

太陽熱が頭皮に届きにくくなるのだと考えています。

 

 

脳の進化に「天然パーマ」が必要だった?

 
 

人類の躍進において

の進化」は欠かせませんでしたが、

脳は大きくなればなるほど熱の発生量も多くなります。

 

直射日光の影響を受けやすい頭部で、

ただ脳を大きくさせてしまっては、

頭がゆでダコ状態になってしまい

熱中症リスクも高くなります。

 

頭部の熱を逃すために発汗量を増やしたとしても、

体内の機能維持に必要な水分や

電解質が過剰に失われてしまいます。

 

おそらく、

その最も効率的な解決方法として、

人類は「クセの強いカールヘア」を進化させたのでしょう。

 

これにより頭皮への太陽熱の流入を防ぎながら、

水分や電解質の損失も抑えることが可能になります。

 

まさに天然パーマは人類にとって

革新的な発明だったわけです。

 

 

縮れ毛は人類の偉大な発明

縮れ毛は人類の偉大な発明 

 

「今から約200万年前に、

私たちと体格は同じですが、

脳の小さい絶滅人類のホモ・エレクトスが登場しました。

 

そして約100万年前には、

基本的に現生人類と同じサイズの脳が誕生しています。

 

人類の脳が大きく進化する上で、

何かが物理的な制約を解き放ったのです」

 

その「何か」の1つの要因に

「天然パーマ」があった可能性を研究者は指摘しています。

 

もし人類がクセ強の天然パーマを進化させていなければ、

脳がここまで大きくなることも、

アフリカから他の大陸に進出することも

なかったのかもしれません。

 

クセの強い縮れがコンプレックスという人も

いるかもしれませんが、

それは偉大な進化の過程で受け継がれたものなのです。

 

 

<参考:ナゾロジー> 

 

 

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