2023/7/2

「どうしても100歳まで生きたい」長寿は目的ではなく結果

 

「どうしても100歳まで生きたい」長寿は目的ではなく結果

 
 
 
 

「どうしても100歳まで生きたい」

人に説いた言葉

人生の悩みに向き合うための道しるべとなる「寓話」

 
 
 
「寓話」と聞いて、
みなさんはどんなイメージを持ちますか? 
もしかすると、
古めかしくて難しい教訓話という
イメージがあるかもしれません。
実は、
古今東西語り継がれる数々の寓話の中には、
私たち現代人があらゆる
「人生の悩み」に向き合うための〈道しるべ〉
となるものがたくさんあります。
 
 

長寿は目的ではなく結果

 

■100歳まで生きる方法

 

ある時、
お金持ちの老人が、
良寛和尚(1757~1831年)のもとを訪れ、
神妙な顔で尋ねた。

「私は今、80歳です。
お金は十分にあるし、
もう何をしたいということもありません。
 
ただ、1つだけ自分の力では
どうしても叶わぬことがあります。
 
何としても100歳まで生きていたいのです。
何か良い工夫があったら教えていただきたい」

良寛和尚は
「何かと思えばたやすいご用だ」
とにこにこしながら答えた。

そして「もう100歳まで生きたと思いなさい。
そうすれば100歳まで生きたことになるのだ。
そう思って一日生きれば、
一日儲かったことになる。
こんなうまい話はない」と言って大きな声で笑った。

老人は自分の欲の深さを悟り、
その日その日を楽しく、
有意義に送るようになった。
 
 
未来のために今を犠牲にしない

お金持ちの老人にとって、

100歳まで生きることが最大の目標だった。

 

 

したがって、

その目標が達成できるのならば、

どんなに好きなことでも我慢するし、

逆にどんなに嫌なことでも

するという気持ちだったのだろう。

 

良寛和尚から

「もう100歳まで生きたと思いなさい」

と諭された老人は、

自分の最大の目標が達成されたのだから

「100歳まで何としても生きるんだ!」

というとらわれから自由になった。

 

それは

「未来のために今を犠牲にする」

という姿勢から

「今を生きる」という姿勢への転換だった。

 

長寿は目的ではなく結果だ

ということを教えてくれる話である。

 

 

高齢者を健康かどうか、

幸福かどうかという2つの視点で

4つに分類してみよう。

 

そうすると、

「健康で幸福な人」

「健康だけど不幸な人」

「不健康だけど幸福な人」

「不健康で不幸な人」

に分けられる。

 

健康のために人生があるわけではない。

人生のために健康があるのだ。

 

健康はそれ自体が目的ではなく、

良い人生、

楽しい人生を送るための条件なのだ。

 

歳を重ねるにつれ、

時間が過ぎるのが速くなった、

これは誰もが感じることだろう。

 

本当にあっという間に1年が過ぎ、

2年が過ぎ、3年が過ぎていくことに

愕然とするときがある。

 

思い返してみると、

子ども時代は初めて体験することばかりで、

新しい出会いや発見が毎日のようにあった。

 

もう少し大きくなって大学に入って間もない頃、

就職して間もない頃は、

新しい環境に飛びこんでいく中で

新鮮な経験が次々と待ち構えていた。

 

しかし、

環境が変わって1年くらいが過ぎると

様子もだんだんわかってきて、

気持ちが落ち着いてくると同時に、

生活がマンネリ化してくる。

 

そうなると、

次第に時間の流れが速くなっていったように思う。

 

要するに、

大人になると時間があっという間に

過ぎ去ると感じるのは、

日々の生活に新鮮味がなくなるからだろう。

体感時間の長さは、

思い出すことができる記憶の量に

比例しているのかもしれない。

 

では、

少しでも時間の流れを遅くする

ためにはどうしたらいいのか。

 

努めて、

新しいことにチャレンジすることだろう。

人は未経験の何かにトライしているときは、

強い感情が湧き上がっており、

それが意識に強く残り、時間が長く感じるようだ。

 

 

若い頃できていたことができなくなったが…

 

■ルービンシュタインの逸話

 

アルトゥール・ルービンシュタイン
(1887~1982年)は、
ポーランド出身のピアニストである。
 

卓越した技術もさることながら、
レパートリーの広さでも抜きん出ており、
リサイタルではさまざまな曲を弾きこなすことで知られていた。
そんな彼も高齢になるにつれて、
若いときと同じレベルで演奏することが難しくなっていった。
そこで彼はある戦略を実行した。

まずコンサートで演奏する曲を厳選することにした。
曲を絞り込むことによって、
若いときよりも1つの曲に時間をかけて
繰り返し練習できるようになった。

さらに、彼は若い頃にはしていなかった
手法を取り入れることにした。
速い手の動きが求められる部分の前の演奏をこれまでよりも
遅くすることで演奏にコントラストを生みだし、
速い部分をより印象づける手法である。
ルービンシュタインは、80歳を過ぎても素晴らしい
演奏活動を続けたことで知られ、
89歳まで現役で活躍した。

 

 

 

目標の選択、資源の最適化、補償
 

ここで紹介した逸話は、

SOC理論

Selective Optimization with Compensation:

(選択最適化補償理論)を

説明するための事例としてしばしば使われるものだ。

 

人は歳をとるにつれて、

さまざまな機能が低下し、

若い頃なら難なくできていたことが、

だんだんとできなくなっていく。

では、歳を重ねていく中で体力や筋力が衰えても、

これまでどおり、

楽しく有意義な人生を送っていくには

どうしたらいいのだろうか。

そこで役に立つのがSOC理論である。

簡単に解説していこう。

 

私たち人間は年齢を問わず、

何らかの目標を定め、

それに向かって生きている。

目標は大きなものから、

日常的な小さなものまでさまざまである。

そういう目標が達成できればうれしいし、

逆に目標が達成できなければ落ち込むことになる。

つまり、

張り合いのある毎日を送るには、

その人なりの目標を持って、

それを達成することが重要なのだ。

 

若い頃のように動けないことを

嘆いていても仕方ない

 

目標を達成する一連の過程は、

① 目標の選択(Selection)、

② 資源の最適化(Optimization)、

③ 補償(Compensation)の

3つの要素に分けられる。

 

ルービンシュタインの逸話を重ねながら、

① 目標の選択、

② 資源の最適化、

③ 補償について説明しよう。

 

 

 
 
『人生の道しるべになる 座右の寓話 』
(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。
 
 

① 目標の選択:目標を絞り込んだり、

目標を切り替えたりすること。

ルービンシュタインの場合は加齢に伴って

今までどおりに演奏することが難しくなったため、

曲目を減らすという戦略をとった。

 

② 資源の最適化:自分の所有する資源

(お金や時間、能力、体力、意欲など)を

どのように使えば自分の目標が

達成できるかを熟慮すること。

ルービンシュタインは厳選した曲

(①)を繰り返し練習しつつ、

新しい手法(③)の習熟に努めた。

 

③ 補償:他者からの支援を受けること、

機械や道具を使って心身の機能の衰えを補うこと、

これまで試していなかった手法を導入すること。

ルービンシュタインの場合は

テンポに変化をつけることで

速さを際立たせる手法を取り入れた。

 

若い頃のように動けないことを

ただ嘆いていても仕方がない。

目標を切り替えること、

自分の所有する資源の使い方を見直すこと、

他者や器具の助けを借りることで、

張り合いのある生活を送ることは十分に可能である。

 

<参考:文=戸田智弘> 

 

 

1喧嘩はするな、
2意地悪はするな、
3過去をくよくよするな、
4先を見通して暮らせよ、
5困っている人を助けよ、

 


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