人間の脳は、
脳の持ち主の安全を確保し、
そのキャリアを順調に進め、
家族や友人、愛する人との絆を
保つという重い責任を負っている。
脳は、心と体の「ボス」であり、
持ち主の人間が眠っている間も含めて、
24時間365日働いている。
休憩や有給休暇をとることもなく、
バケーションにも出かけない。
自分の脳がどれだけ献身的に
働いてくれているか、
ぜひ考えてみてほしいところだ。
しかし大半の人は、
この驚異の臓器である脳の働きを、
当たり前のことだと思っている。
最高に健康な状態を保ち、
ベストなパフォーマンスを出すために
脳が何を必要としているのか、
注意を払っている人はあまりに少ない。
一方で、
神経科学の研究者は、
絶えず脳の健康について研究し、
脳が幸せで健康な状態を保ち、
人がキャリアを維持するために
必要なことについて、
改めて注意を喚起している。
神経科学の研究者は、
最新の画像診断技術の力を借りつつ、
人間の脳に関する理解を深め、
脳がベストな健康状態を保つために
必要なことを解き明かしている。
以下では、
科学で明らかになった、
幸せで健康な脳をキープし、
キャリアでも
最大限の成功をつかむのに
役立つ10の習慣を説明していこう。
1. 定期的な運動や体を
動かすことで血流を整える
生き生きとした、
創造性にあふれる脳を保つための
良薬が血流だ。
定期的な運動や体を動かすことを心がけると、
脳に流れ込む血流が増し、
物忘れや認知症の発現を遅らせられる。
脳が必要とする多くの血液を供給するには、
有酸素運動やウォーキング、
ストレッチなどの運動が有効だ。
体を整え、
きびきびと動き、魅力的で最高の
コンディションにするのに役立つ。
2. 仕事時間の合間に
5分間程度の短い休憩をとる
へとへとになるまで脳を酷使するのは
良くない習慣だ。
「脳を冷やす」5分間の小休憩は脳にとって
とても有益なので、
長時間机にかじりつくのはやめておこう。
仕事時間の合間合間に短い休憩をとることで、
ストレスが減り、活力レベルが上がり、
脳をリセットすることができる。
さっそく立ち上がり、
深呼吸をしよう。体をゆすったり、
ひねったりストレッチをしたりして、
デスクワークでたまった緊張を和らげよう。
こうした小休憩は、
決断疲れ(意思決定を長時間繰り返した後で
決定の質が低下する現象)を緩和し、
会議などの合間に脳を落ち着かせるのに役立つ。
具体的な活動の例としては、
深呼吸や瞑想、
ヨガやマッサージを試すと良いだろう。
3. 自分に話しかける
自分に話しかけることで、
自らの脳との連携を緊密にする効用が
期待できる。
そう聞くと、
最初は違和感を覚えるかもしれないが、
実際はそんなことはない。
なかでも、
自分をファーストネームで呼ぶ方法、
つまり「私」ではなく、
誰かから話しかけられている時のように
名前で呼ぶと、
自己規制のメカニズムが働き、
仕事における不満や失望との間に、
心理的な距離を取ることができる。
このような「自分との対話」の形で
職場のストレス要因に向き合うと、
気持ちが落ち着き、
頭がさえてくるのを感じられるはずだ。
4. 脳の健康にいい、
気分を好転させる食品を食べる
脳の健康にいい食べ物には、
気分や健康、
忍耐力を向上させる効果がある。
食材をチェックし、
脳の全体的な健康にプラスになるか?
と問いかけるといいだろう。
肉類や乳製品、チーズや卵といった
タンパク質が豊富な食品は、
血糖値を安定させ、
神経伝達物質の通り道を作るのに
必要なアミノ酸の供給源となる。
サケやサバ、マグロやイワシなどの魚に
含まれるオメガ3脂肪酸は、
脳を好調に保つのに役立つ。
脳の健康維持に不可欠なビタミンBは、
卵や全粒穀物、魚、アボガド、
かんきつ類などに含まれている。
また、
ビタミンDも気分の安定に重要な役割を果たす。
5. 十分な睡眠時間をとり、
睡眠不足を避ける
脳は、
満足な休息がとれないと動きがおかしくなる。
睡眠不足になると、
仕事のストレスに対応する能力が落ち、
勤務時間中に怒りを爆発させる
事態にもなりかねない。
眠れないと脳の働きが鈍くなり、
頭がぼんやりして物忘れが増える。
睡眠不足は、
記憶や学習にも悪影響を与え、
注意力の回路がうまく動かなくなる。
また、睡眠が断片化すると、
キャリアの前向きな面に目を向けることが
困難になり、
仕事上のストレス要因に受け身の
対応しかできなくなる。
一方、十分な睡眠をとれば、
大脳の可塑性が回復して明晰さや
パフォーマンスが増し、
仕事のストレスにもうまく対処できるはずだ。
6. 瞑想や意識的な深呼吸で
頭脳をシャープに保つ
マインドフルネスに配慮した
瞑想や意識的な深呼吸は、
頭脳をシャープに保ち、
横道にそれるのを防いで集中するのに役立つ。
瞑想は、「ストレスホルモン」とも呼ばれる
コルチゾールのレベルを25%低下させ、
脳の活動に変化を及ぼす。
たったの20分間瞑想するだけでも、
間違いを起こしにくくなり、
ミスの数が減るはずだ。
7. 自然に触れ、
より高いレベルの
心理的健康を目指す
屋外で時間を過ごす習慣がある人の
脳をスキャンすると、
前頭前皮質に含まれる灰白質が多いという。
これは、思考が明晰で、
自制力も強いことを示す。
少なくとも1週間に2時間、公園や森林、
で過ごすのは、脳に良い習慣だ。
ある研究によると、
1週間に120分間自然の中で過ごした
参加者は、
そうでない人と比べて健康状態が良好で、
より高いレベルの心理的健康を
確保できていたという。
8. 大所高所から、
状況の良い面と悪い面の
両方に目を向ける
幅広い視点は「空からの視点」
としても知られるものだ。
これは、
これまでの人生のプラス面を基盤として、
未来の可能性に目を向けるものになる。
カメラに例えると、
脳の「ズームレンズ」を「広角レンズ」と
交換することであり、
ストレスの要因になっているものばかりに
着目していたところから、
視点を広げ、
大局的な見地や可能性に目を向けるということだ。
こうした視点のシフトは、
状況の良い面と悪い面の両方を
理解するのに役立つ。
そうすれば、
苦境の中でのチャンスや、
「問題の中に隠れていた解決策」に
気づけるだろう。
9. お気に入りの音楽を聴く
その人にとって意味のある音楽を繰り返し聴くことは、
大脳皮質の可塑性にプラスの効果をもたらし、
記憶やパフォーマンスの向上に役立つ。
ワイヤレスのイヤホンをつけてお気に入りの
音楽を聴きながら働くことで、
仕事への集中や生産性がアップする可能性もある。
10. 楽観的、前向きに考える
楽観的な人は、
悲観的な人に比べて、
キャリアアップのスピードが速く、
より高い役職に昇進する傾向がある。
人間の脳はもともと、
過酷な自然界で危険を察知し生き残るために
「悪い方」を考えるようにできているが、
その一方で楽観的な見方も好む。
慢性的なペシミズムは、
生きる姿勢だけでなく、
テロメアにも悪い影響を及ぼす。
テロメアとは、
各細胞の中にある染色体の末端にある、
遺伝子を守る小さな構造だ。
ネガティブなことを考えていると、
テロメアが短くなり、
前向きな考えを持つと伸びるという。
テロメアの短縮は、
健康状態の悪化と結びつけられており、
キャリアの中断、
さらには早死にとも関連があるとされる。
熱意があり、
快活なプロフェッショナルは、
年齢を重ねても、物忘れになる可能性が低い。
「脳を健康に保つ」計画を立てよう
気がついていないかもしれないが、
脳は暖かい季節を好む。
日が長くなると気分が良くなり、
認知能力にもプラスの効果がある。
太陽光を浴びることで、ビタミンDの生成も促される。
これは、記憶能力や気分の向上との
関連が指摘されている栄養素だ。
春は、外に出かける機会も自然に増え、
「脳のためになる行動」をとりやすい時期だ。
外で過ごしたり、
新鮮なものを食べたり、
ほかの人と会って楽しむ機会が増えるからだ。
4月の1カ月は、
米国ではストレス啓発月間に指定されている。
これを機に、
これまでと違ったやり方で自分の脳をいたわり、
その健康を促進させることを考えてみよう。
それは、
キャリアでの成功や、
健康的に長生きすることにもつながるはずだ。
<参考:>