2024/4/14

「脳幹出血の症状」はご存知ですか? 原因・なりやすい人の特徴

 
 
 
 
 

「脳幹出血の症状」はご存知ですか?

原因・なりやすい人の特徴も

医師が解説!

 

 

 

「脳幹出血」とは?

 

脳幹とは、

脳の深部にあり意識や呼吸などの

生きるために必要な機能を担う部位です。

 


頭部画像検査では、

おおよそ真ん中に位置しており、

中脳・橋・延髄から構成されます。

 


脳幹出血は脳出血の中では

10%程度の割合で起こると言われますが、

生命の維持が危ぶまれることがあるため、

脳出血の中でも最も予後が悪い

タイプであるとされています。


今回はこの脳幹出血について解説します。

 

脳幹出血の代表的な症状

 

脳幹は生命維持に必要な機能を司るため、

出血によって致命的な症状が

生じることがあります。

 

また、

脳幹部には、脳神経核といって

顔や頚部などに関係する

末梢神経の中枢部分が複数あることから、

顔や頚部などのさまざまな症状を

呈することがあります。

 

 

意識障害

 
 

脳幹には意識の中枢があるため、

脳幹出血を発症すると意識障害に

陥ることがあります。

 


脳幹出血の程度によりますが、

大きな声で話しかけても体を揺さぶっても、

簡単に意識状態が改善しないという

可能性もあります。

 

普段いびきをかかない方が、

突然大きないびきをかくようになった

場合には注意が必要です。

 

 

眼球運動障害

 
 

代表的な目を動かす神経には動眼神経、

滑車神経、外転神経がありますが、

これらの神経がダメージを受けることによって

眼球運動障害をきたします。

 

目の動きの悪さはダメージを受けた

部位によって異なりますが、

片側の目だけではなく、

両目とも動かしづらくなり、

ものが二重に見えてしまうなど

という症状が見られます。

 

 

片麻痺(片側の体の運動機能の低下)

 
 

左右どちらか片側の運動機能の

低下のことを片麻痺といいます。

 

脳幹出血を生じると手足や顔を動かす

神経がダメージを受けるため、

麻痺してしまいます。

 

脳幹部は重要な神経の集合体であるため、

画像上は出血量が少なめに見えても

重度の神経症状が出現することがあります。

 

 

構音障害

 

構音障害とは、

音を作る器官やその動きに問題があって

発音がうまくできない状態のことをいいます。

 

脳幹出血では口周囲や喉の筋力が

低下することがあります。

 

そのため、

唇や舌の動きが悪いと喋りづらくなり、

声にかすれがあったりうまく声を

発することができなかったりします。

 

 

嚥下障害(飲み込む機能の障害)

 
 

脳幹出血によって喉の筋肉を動かす

神経が働かなくなるため、

飲み込めなくなることがあります。

 

食べ物だけではなく、

よだれを飲み込む動作がうまく機能しないため、

むせたり食道ではなく気管に

入ったりしてしまうことになります。

 

気管に食べ物や液体が入っていくと

窒息や誤嚥性肺炎を生じる

危険性が高い状態になってしまいます。

 

そのため、

このような状況で食事をとる場合には、

胃菅といって鼻の穴から

胃にチューブを挿入して、

そのチューブから栄養剤を胃の中へ

流し込むという方法で対応します。

 

 

脳幹出血の主な原因

 

高血圧

 

脳出血の最大の発症原因は高血圧です。

これは脳幹出血の場合にも当てはまります。

 


血圧が高い状態が続くと、

血管への負担が高まり、

動脈硬化が進んでしまうことで、

結果的に血管が破れて出血しやすく

なるという変化が生じてしまいます。

 


高血圧は脳以外の心臓などの病気にも

悪影響を及ぼす可能性があります。

 

長期間にわたって血圧が高い

状態を放置するということは避けるべきです。

 

 

脳幹部の血管異常

 
 

脳血管の異常が脳幹部に

見られる場合もあります。

 


特に海綿状血管腫という血管の病気が

脳幹部で見られる場合には注意が必要です。

 


海綿状血管腫は脳内の至る部位で

発生する可能性がありますが、

脳幹部にできる海綿状血管腫は

他の部位のものに比べて

出血率が高く死亡率も高いという

特徴があります。

 

脳幹部は重要な神経線維などが

密集していることから、

小さな出血でも神経症状が出現して

見つかるケースもありますが、

脳ドックなどで偶然見つかることもあります。

 

 

脳幹出血を発症しやすい人の特徴

 

高血圧症の人

 

前述のように血圧が高いことが

脳幹出血の発症原因として重要です。

 


塩分摂取量が多い食事を続けていたり、

肥満であったり、

睡眠時無呼吸症候群などの

病気を有していることも

血圧が上がる要因となるので、

当てはまる場合には注意が必要です。

 

 

喫煙者・アルコール多飲の人

 

喫煙は脳卒中以外にも、

がんや心臓病、

肺の病気などの危険性を高めることが

知られています。

 

タバコをやめることで発病リスクを下げる

効果がありますので、

今から禁煙を実践することでも

全く遅くありません。

 


そして、

大量にアルコールを摂取することも

脳卒中のリスクを高めることがわかっています。

 

1日1合程度を目安に飲酒するようにし、

週に2日程度は休肝日を

設けるようにしましょう。

 

 

すぐに病院へ行くべき

「脳幹出血の症状」

 
 

ここまでは脳幹出血の症状となる

症状を紹介してきました。


以下のような症状がみられる際には

すぐに病院に受診しましょう。

 

 

突然意識状態が悪くなった場合は、

脳神経外科へ

 

脳出血は突然発症します。

 

大声で話しかけても揺さぶっても

意識が戻らない場合や、

嘔吐を繰り返している場合には、

救急車を呼んですぐに病院を

受診する必要があります。

 


症状だけでは脳幹出血かどうか判断できず

画像検査を行い診断しますが、

脳幹出血の場合には致命的な状況に

陥る可能性も高いので、

早く受診することが大切です。

 

 

受診・予防の目安となる

「脳幹出血の症状」の

セルフチェック法

 
 
  • ・急に意識が悪くなった場合
  • ・急に手足の動きが悪くなった場合
  • ・急に目の動きが悪くなった場合
  • ・急に喉の動きが悪くなってうまく飲み込めない場合
 
 

適切な血圧管理

 

血圧を下げることが脳出血の

発症予防に効果的です。

 

そしてこれは生活習慣を見直して

改善させることで実行することが

可能な方法です。

 


高血圧の改善には塩分摂取量を

減らすことと適度な運動が必要です。

 

かつて日本人は塩分摂取量が多い

傾向があって重度の高血圧患者も

多いと言われていました。

 

脳卒中は国民病と言われ、

1970年前後までは脳卒中の中でも

脳出血が多数を占めていました。

 

しかし、

塩分摂取量を減らすことや

降圧薬を用いることで脳出血の

死亡率は徐々に減ってきたという

経緯があります。

 

ラーメンやスープの汁は残すこと、

漬物や佃煮は食べすぎないことなど、

食事方法ですぐできることから

取り組むことがおすすめです。

 

また、

有酸素運動を中心とした運動習慣を

続けることも一緒に行うことが良いでしょう。

 

これらの対策でも血圧の値が

改善しない場合には、

降圧薬を用いて治療する必要があります。

 

 

健康的な生活習慣の維持

 
 

喫煙や肥満、睡眠不足、食べ過ぎ、

飲み過ぎなどの生活習慣から

生じる生活習慣病が動脈硬化の原因となり、

血管の病気を引き起こす

ことにつながります。

 


禁煙や適切な食事量、

睡眠時間の確保を行うなど、

可能な限り健康的な生活習慣を

維持することが望まれます。

 

 

脳幹部の異常血管に対する治療

 
 

脳幹部に異常な血管があって

出血の原因となっている場合には

それに対する治療を考慮します。

 


前述のように脳幹部にできる

海綿状血管腫は出血率が高く

死亡率も高いことが知られています。

 

出血を繰り返すこともあることから、

海綿状血管腫を摘出する手術を検討します。

 


脳幹部は脳の深部にあり

重要な神経が密集している部位なので、

手術に伴う合併症の可能性もある

難易度の高い手術です。

 

そのため、

新たな合併症が最小限で済むように、

適切なタイミングをみはからって

手術を行うことになります。

 

担当医からよく説明を聞いてください。

 

「脳幹出血の症状」

についてよくある質問

 
 

ここまで脳幹出血の症状となる

症状などを紹介しました。

 

ここでは「脳幹出血の症状」について

よくある質問に、

Medical DOC監修医がお答えします。

 

 

脳幹出血は回復するのでしょうか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

ケースバイケースです。

一般的に脳出血は少量の出血であれば

症状は軽く済む可能性がありますが、

少量でも急所に出血してしまうと

重い後遺症を残す場合があります。

 

 

 

脳幹出血の予後について教えてください。

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

他の部位に起こる脳出血と比べて

脳幹出血の予後は悪いと言われています。


脳幹出血を発症した時点での

意識状態や出血量、

神経症状の程度など

様々な指標は予後に大きく

影響すると言われています。


出血量が多い場合には、

発症して数日以内で

亡くなってしまうこともあります。

救命できた場合でも呼吸中枢が

ダメージを受けていると、

人工呼吸器を使用しないと

生命を維持できなくなり、

重い後遺症が長く残ってしまうことがあります。

 

 

 

脳幹出血の生存率はどれくらいですか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

文献にもよりますが、

意識状態がよく出血量が少ない場合には

生存率は高い傾向であるものの、

全体の生存率は10−70%といわれており

脳出血の種類の中で

最も低い生存率といえます。

 

 

まとめ

脳幹部は生命維持に必要な中枢機能があり、

また重要な神経が密集して存在する場所です。

脳幹出血は出血量が多いと致命的になりますし、

少量の出血量でも重要な部位にダメージが及ぶと

神経症状が出現することがあります。


自分自身で可能な発症予防法は

血圧管理ですので、

生活習慣の見直しを行い改善に

努めていただければと思います。