2025/4/26

《力=質量×加速度》は 「非常によくできた嘘」!?… じつは我々の世界を 「支配している」量子力学に、 なぜ人は気付けないのか

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

《力=質量×加速度》は

「非常によくできた嘘」!?…

じつは我々の世界を

「支配している」量子力学に、

なぜ人は気付けないのか

 
 
 
 

「いつの日かAIは自我を持ち、

人類を排除するのではないか―」

 

2024年のノーベル物理学賞を受賞した

天才・ヒントンの警告を、

物理学者・田口善弘は真っ向から否定する。

 

 

理由は単純だ。

人工知能(AI)と人間の知能は

本質的に異なるからである。

 

しかし、

そもそも「知能」とは何なのだろうか。

 

その謎を解くには、

「知能」という概念を再定義し、

人間とAIの知能の「違い」を

探求しなくてはならない。

 

生成AIをめぐる混沌とした現状を

物理学者が鮮やかに読み解く

田口氏の著書『知能とはなにか』より、

一部抜粋・再編集してお届けする。

 

 

 

 

理解できないが現実世界を

支配している量子力学

 
 
 

高校の物理学にはほとんど

出てこないのであるが、

 

量子力学という学問がある。

 

量子力学というのは原子や分子のような

微粒子をミクロで扱う科学で、

 

我々の日常には関係ないと

思っている人も多いのだが、

 

それは全くの誤解で、

量子力学は我々の日常生活も支配している。

 

じゃあ、

なんでそれに気付かないのか、

というと前記の式に代表される

古典力学が非常によくできた嘘だからだ。

 

 

 

 

例えば、量子力学の世界では、

「運動量と位置を十分な精度で

同時に測定することはできない」という

「不確定性原理」と呼ばれる法則がある。

 

ここで「運動量」という耳慣れない

言葉が出てきて戸惑うかもしれないが、

 

 

運動量=質量×速度

 

 

なので、

質量は一定だから「運動量と位置を

十分な精度で同時に測定することはできない」は

「速度と位置を十分な精度で同時に

測定することはできない」であると思ってほしい

(「だったら最初から

『速度と位置を十分な精度で

同時に測定することはできない』と書けよ」と

思うかもしれないが、

 

実は速度自体がすでに

「人間の大脳が作った概念規定的な量」

なので量子力学にはでてこないので

仕方がないのだ)。

 
 
 

力=質量×加速度は嘘?

 
 

さて、ある位置でどんな速度を持っているか、

決してわからないのに、

加速度なんて定義できるだろうか?

 

勿論できないのである。

 

加速度が定義できない以上、

力=質量×加速度という式は

成り立ちようがなく、

したがってこれはまごうことなき嘘っぱちなのだ。

 

 

「そんな嘘っぱちがなんで成り立つのか?

それをなんで学んだりしたのか?」

というのは簡単な話ではない。

 

もし、

生物が量子力学の世界を

直接理解できる能力を獲得していたら、

 

あるいは、

この本の文脈でいえば正しい

世界シミュレーターを獲得できていたら、

古典力学なんてなくても構わなかっただろう。

 

 

我々の日常世界も量子力学に従っている以上、

別に量子力学を直接知覚すれば済むはずで、

古典力学みたいなまがい物を

あいだに挟む必要なんてないはずだからだ。

 

 

だが、それは非常に難しい。

 

例えば、

不確定性原理に従えば、静止は存在しない。

 

なぜなら、

静止とはある場所に速度ゼロでいることだからだ。

 

静止を認識するには、

物体の位置と(ゼロである)速度を

同時に観測できないといけないが、

それは禁止されているのだ。

 

静止という概念が存在しない

世界観なんて考えたくもないだろう。

 

 

ただ、

これはちょっと誇張した話をしているのであって、

現実には「十分な精度」という要求がとても緩く、

 

 

人間の知覚の範囲内では同時に

求めていないとは思えないほど

誤差が小さいので我々には

物体が静止して見えるわけだ。

 

 

なので、

量子力学を直接知覚する世界シミュレーターの

脳を持った生物がいたとしても、

 

そいつは静止状態を「物体の速度が

(非常に小さい誤差の範囲で)ほぼゼロで、

 

だいたいこの辺にいる状態」とは

認識できるだろうから「静止」という

概念がなくても実用上は困らないと思われる。

 

 

 

 
 
 
 
 

「AIは人類を上回る知能を持つか?」

「シンギュラリティは起きるのか」。

 

今世紀最大の論点に機械学習に

精通した物理学者が挑む

 

 

チャットGPTに代表される生成AIは、

機能を限定されることなく、

幅広い学習ができる汎用性を持っている、

 

そのため、将来、

AIが何を学ぶかを人間が制御できなく

なってしまう危険は否定できない。

 

しかし、だからといって、

AIが自我や意識を獲得し、

自発的に行動して、

人類を排除したり、

抹殺したりするようになるだろうか。

 

この命題については、

著者はそのような恐れはないと主張する。

 

少なくとも、

現在の生成AIの延長線上には、

人類に匹敵する知能と自我を持つ

人工知能が誕生することはない、

というのだ。

 

 

その理由は、

知能という言葉で一括りされているが、

人工知能と私たち人類の持つ知能とは

似て非なるものであるからだ。

 

 

実は、私たちは

「そもそも知能とはなにか」ということですら

満足に答えることができずにいる。

 

そこで、

本書では、曖昧模糊とした「知能」を再定義し、

人工知能と私たち人類が持つ

「脳」という臓器が生み出す「ヒトの知能」との

共通点と相違点を整理したうえで、

 

自律的なAIが自己フィードバックによる

改良を繰り返すことによって、

 

人間を上回る知能が誕生するという

「シンギュラリティ」(技術的特異点)に

達するという仮説の妥当性を論じていく。

 

 

生成AIをめぐる混沌とした状況を

物理学者が鮮やかに読み解く

 

 

 

<参考:>